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正常な世界にて

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 とにかく、目が不自由な少女は、荒れゆく街の歩道を自分の足で歩いているのだ。付き添いの犬や人を付けず、地面をツンツンとつつきながら。
「ちょっと行ってきます」
ゲート係の男が彼女の元へ向かう。良心からスルーするわけにいかなかったご様子だ。
「連れてきたいなら早くしてよ!」
坂本君は男にそれだけ言うと、車のスマートキーを手にすべく、ズボンのポケットを探る。伊藤はハリアーのドアハンドルに手をかけ、ドアロック解除を待つのみ。
「私も行ってくるね」
坂本君が呼び止めたが、私も盲目少女を助けに向かう。
 最近の所業への負い目から、このまま何もせずにはいられなかった。もちろん、純粋な良心からでもある。
「危ないから気をつけて! えっと、そこの……高校生ぐらいの子!」
ゲート係が彼女に近づき、大声をかける。そんな大きな声だと驚かせてしまうんじゃないかと、ヒヤヒヤする私。人体が優秀なおかげで、視覚障害者は聴覚が常人以上に強くなるというからね。

 ……んんっ? 白杖にしてはやけに太く見える。視覚障害者の命綱とはいえ、あれほど重く頑丈そうである必要はあるのかな?
 白杖に疑問を覚えると同時に、盲目少女の行動にも疑問符が浮かぶ。生活に困った末の単独行動とはいえ、非常に危険と想定できる駅前へわざわざやってくるものかと。
 それから次の瞬間……。
 私が思い浮かべた疑問符二つは、重厚かつ乾いた銃声一発を奏でた。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん