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正常な世界にて

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 ……けれど一通り話した結果、両親の表情は歪みに歪んだ。
「そんなのはただの性格! 個性よ個性!」
「お前の甘えじゃないか! あ・ま・え!」
面倒臭く強烈な反応を示された……。
 まず両親は私が何の相談もなく、精神科へ行ったこと自体を怒っている。とにかく世間体が気になるんだろう。ここは排他的なド田舎じゃなく、政令指定都市の名古屋なのに……。
「子供の頃から頑張ってきた! でもでも、どうしても上手くいかないから診てもらったの!」
感情がこみ上がり、声を張り上げる私。親にこれほど熱弁したのは久々だ。
「何言っているの!? 努力してるようには全然見えないわよ!」
「もっと頑張れば、必ずなんとかなる!」
両親が示す根性論に、私はブチ切れるしかなかった。ここまで激怒したのも久々だ。


 ふと気づけば、私は自室のベッドで仰向けになっていた。壁の掛け時計は、深夜未明だと告げている。いつの間にか寝てしまったらしい。
 部屋のドアをこっそり開け、廊下やリビングの様子を伺う私。リビングには、豆電球だけが灯っている。両親はもう寝たらしい。
 夕食は諦め、風呂だけ済まし寝よう。湯船に浸かりながら、ブチ切れ後の件を思い出さなきゃ……。



 翌朝、いつものように目を覚ませた私。目覚まし時計のスヌーズ機能のおかげで、これが無ければ毎朝遅刻だ。
「あっ」
朝一のあくび直後、昨夜の件を改めて思い出して憂鬱に……。

 朝食も食べないわけにいかないので、リビングへ向かう。しかし、私の足取りは今も重い。
 生活音から両親は朝食を取っているらしい。父は出勤後であってほしかった。しかし、自室で待っていたら遅刻してしまう。
 足も気も重いものの、リビングのドアを開ける私。サビた鋼鉄の扉でも開けるように感じられた。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん