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正常な世界にて

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「障害者を優遇するな!」
「逆差別を許さないぞ!」
「平等に扱え!」
デモ隊の主張はこの三点だった。壊れた音楽プレイヤーのように、エンドレスリピートで叫んでいる。彼らが掲げる看板にも、同じ主張が書いてある。あれなら、聴覚障害者でもわかるわけだね……。

 少しすると、警察のサイレンが聞こえてきた。徐行を強いられているドライバーか、良心的な誰かが、警察に通報したんだろう。
「道路の不法占拠はやめなさい! 道路の不法占拠はやめなさい!」
到着したパトカーからアナウンスがあった。
 デモ隊が立ち止まる。しかし、よほど覚悟を決めているらしく、行進を再開した。
「ただちに道路から離れなさい! 道路から離れなさい!」
応援を呼んだのか暇だったのか、2台目のパトカーが到着した。道路は2台のパトカーで、軽い通行止めの状態だった。
 ところが、デモ隊は構わない様子で、パトカーの脇を通り過ぎていく。
「こらっ! 歩道に戻りなさい!」
パトカーから出てきた警官が、デモ隊に叫ぶ。だが、デモ隊の歩みは止まらない。
 しびれをきらした警官は、すぐ近くにいたデモ隊のメンバーの肩を掴む。そのメンバーを両手を振り回し、警官の手を振り払おうとする。
「イテッ!」
勢いよく振り回した拍子に、警官の顔にメンバーの手が命中してしまった。公務執行妨害だね。
「このぉ!!」
警官は、そのメンバーを取り押さえようとした。だが、別のメンバーが逆上した様子で、警官の背中に蹴りを一発ぶちかます。
「何をするんだ!」
他の警官がパトカーから出てきた。
 たちまち一悶着の発生となった。デモ隊の何人かが、警官たちと殴り合いを始める。警官の帽子が地面に落ちた。
 ……ふと気がつくと、周囲にいた人々が、スマホをその一悶着のほうに向けている。撮った写真や動画を、ツイッターにでも流して、自慢するつもりだろう。とはいえ私も、その現場をつい写真に収めた……。

 一悶着の混乱で、デモ隊は人数を減らしたが、今も二十人ほどが無届けのデモ行進を続けている。根性があるね。
 複数の警察のサイレンが遠くから聞こえてくる。ドンドン派手な騒ぎになってきた。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん