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正常な世界にて

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 もしここで彼女に殺されるぐらいなら、真実を全部知ってからのほうが断然マシだ。せめてスッとした気分で死にたいからね……。
「高山さんたちの事や目的を教えてくれない? もしかしたら、何か力になれるかも」
私はそう言った。後半の言葉はセールストークみたいなものだ。
「はぁ? 何言い出すんだよ?」
振り返った坂本君が言った。私の思い切った提案に驚いているらしい。怪訝そうな表情が彼の顔に浮かんでいる。
「……ああなるほど。まだ知らない事だらけだから、知りたくて仕方がないってことだね。でも、秘密にしておかないといけない事だらけだから、聞き終えた後で「敵」になるのは勘弁してよ?」
彼女は提案を受け入れてくれた。彼ほど全然驚いている様子ではないから、想定内の提案に過ぎなかったようだ。ここは驚いてくれたほうが、なんとなく嬉しいものだけど、贅沢は言えないね。その一方で、彼女が私の提案を受け入れたことに対して、彼はまたもや驚きを隠せていなかった……。私と彼女の顔を、何度も往復して見てきた。

「私の部屋で話すからついてきて。下はまだ盛り上がっているから、腰かけて話せるよ」
高山さんはそう言うと、廊下の奥側へ歩き始める。彼女の部屋は、この部屋よりも遠い場所だったようだ。
 もし一番奥の部屋から探検を開始していたら、この部屋へは入らずに終わったかも……。だけど、これは完全に今さら遅い話でしかなく、高山さんがこの後で語る話のほうが、よっぽど重要だ。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん