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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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しらない子

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1,さよなら。ボロ校舎

 真夏の昼下がり、長い坂道をのぼって校門までやってきたゆみは、二宮金次郎の像のところで立ち止まり、一息つきました。
 そこから30メートルほど先にある柿の木まで一気に走って幹に手をつくと、大きな声で言いました。
「いっちばぁ〜〜ん」
 ゆみは麦わら帽子をとって、おかっぱの前髪をかきあげて汗をぬぐうと、柿の木に話しかけました。
「元気だった? 今日はね、あんたとあのボロ校舎と遊ぼうと思ってきたんだ」
 今日は8月1日です。
 学校が新しくなるという話は、ゆみが四年生になってまもなく先生から聞きました。それも四年生の校舎が一番はじめに壊されるというのです。
 そして新校舎は、この柿の木のあたりから四年生の校舎の位置に建てられるということでした。
 ゆみは古くて暗くてお化け屋敷ごっこのできるこの校舎が大好きでした。
 ですから、なかよしのはるかや久美子といっしょに夏休みに学校で遊ぼうと約束したのです。けれど、なかなか三人の都合が合わず、この日だけになってしまいました。

 木陰で二人が来るのを待っていたゆみですが、まだ来ないので、もってきたゴムまりでまりつきをはじめました。
「いちのみやーのいーすけさん、いちのじーがきーらいで♪」
 元気な声で歌いながら足を上げてまりをくぐらせます。
「にーのみやーにわーたした♪」
 まりを後ろに回して、こしのところでうまくつかみました。
 ぱちぱちぱち……
 とつぜん手をたたく音がきこえたので、ゆみはびっくりして振り返りました。
「君、うまいね」
 見たこともない少年が立っています。ほんのりピンク色のほおの、目鼻立ちのはっきりした上品な顔つきで、人なつっこい笑みを浮かべています。赤みがかった髪の毛は日差しを受けて金色に光っています。
「あんた、だれ?」
 けれど少年は答えずに話し続けます。
「歌も面白いし、足を上げたりしてすごく上手だね。それにおしまいの、後ろでまりをつかむのって見ないでできるんだからすごいよ」
 あんまりほめるので、ちょっと照れくさくなったゆみは、わざとすまして言いました。
「なれれば簡単だよ。こんなの」
「でも、ぼくなんかできないよ」
 少年が真顔で言うので、ゆみは吹き出してしまいました。
「なにいってんの。男の子はまりつきなんかやんないよ。ふつう」
作品名:しらない子 作家名:せき あゆみ