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それが家門なら

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3 戯れ事



つけ入る隙と
乗っ取る価値の
ある財力

世間から
一目おかれる
ゆかしい家風

君の家に
目をつけたのは
そのためだ

いつの日か
名門宗家の一員に
なりたいという
父の宿願

そして
その日を
早めるために

君の家に
家業を乗っ取る
ゲームを仕掛けた

経営危機を
手玉に取って
融資をエサに
もぐりこみ
頃合いを見て
買い占める

巷では
よくある買収
ごくありふれた
狩りゲーム

ゲームは
単純明快で

名門宗家の財力を
そっくりそのまま
手に入れるのも
単なる
時間の問題と

たかをくくって
戯れ事をした

何はともあれ
恩着せがましく
手を組もうかと
言う矢先

たかが
獣の分際で
似合いもしない
戯れ事をした

降伏する
融資を受けると
苦渋の決断
携えて来た
会長に

つまりは
君のお祖父さんに

自分の口から
素性を明かした

何に背中を
押されたか
ゲームの前に
名乗らなくていい
素性を名乗った

「自分は野蛮で
血も涙もない
商人だ」と

「利無しと見れば
即切り捨てる
骨の髄までの
商人だ」と

「それでも私と
手を組みますか」と
ぶちまけた

笑止千万

襲うべき
獲物に向かって
前もって
正体明かして
念押した

魔がさしたか
獣に侠気が
よぎったか

そうでなければ
獣は獣の
浅知恵で
遠からず
刃(やいば)を向ける
日のために
免罪符ぐらい
欲しがったのか

どの道
いつもの
僕じゃなかった

「自決玉砕で
事が済むなら
むしろ僥倖
そうもしようが
降伏以外に
道がなければ
恥忍んででも
せねばなるまい」

そう言ったきり
遠くを見つめた
一家の主
家業の長

獲物とは言え
急襲するに
忍びない
その素心と泰然

獣が獲物に
心の底で
敬意を表して
瞑目した

戯れた理由が
腑に落ちた

作品名:それが家門なら 作家名:懐拳