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それが家門なら

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17 針は刺さない



「こんな僕でも
一ときは
恋人だったと
覚えてて」

因果な芝居の
千秋楽も
今日か明日かと
いうころに

口ついた
狎れと未練を
即 恥じた

「サソリの話を
した人が
サソリみたいで
哀しく見えて
辛かったから
忘れない」

あれが返事と
知ってたら
口が裂けても
言わなかった

我が身は
二の次三の次

二言目には
サソリを案じる
瀕死のカエルの
無欲さかげんに
絶句した

芝居にゲームに
家業の買収
つくづく
煮え湯を
飲まされてなお

刺したいなら
刺してもいいと
それが性(さが)なら
しかたがないと

突き立てられた
針先で
瀕死のカエルは
その一点張り

お人好しにも
バカがつく

サソリが如何に
鈍いとて
性(さが)振りかざす
愚か者とて
どの面下げて
針刺せる?

刺そうにも
針に力が
入らない

心配いらない
この針は
二度と再び
君には向けない

愚かなサソリの
最初で最後の
良心が
瀕死のカエルに
してやれるのは

刺さずに
「逃げろ」と
突き飛ばすこと

乱暴なこと
この上ないが

惚れたカエルを
刺す気になんか
なれやしないから
突き飛ばす

力の及ぶ限り遠くへ
突き飛ばす

どんな辺鄙な
地まで飛ぼうが
やがては慣れる

落ちた拍子の
打僕も傷も
いつかは癒える

この針に
まかり間違って
刺されて死ぬより
はるかに長く
平穏無事に
生きられる

だから
突き飛ばす

突き飛ばすから
早く逃げろ

そして愚かな
サソリのことは
1日も早く
忘れるが勝ち

作品名:それが家門なら 作家名:懐拳