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それが家門なら

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15 雁(キロギ)の置き物



(1)

作れと言えば
料理も作り
会えと言えば
人前にも出る

逆らわず
しゃしゃり出もせず
ケチつけようにも
アラもない

肩の手は
恥ずかしげによけ
怒れば電話は
先に切る

奥手のくせに
勇ましいこと
この上ない

しらを切るのも
黙りこくるのも
反論するのも
上手くて困る

心を読むのも
機微を突くのも
図星をさすのも
上手くて困る

相槌打つのも
まぜっ返すのも
さらりと情けを
かけるのも

上手すぎて
ほとほと困る

いつからだろう
君を求めて
君を欲した

とうの昔に
芝居なんかじゃ
なくなってた

無理強いするのも
ねだるのも
威嚇するのも
手を差し出すのも
本音だった

言った言葉を
信じるなと
勝手なルールを
突きつけといて

ぶつけた言葉は
どれもが本音

芝居もゲームも
言い出しっぺは
僕なのに

「すべてがすべて
芝居やゲームと
決めつけるな」と

吐く暴言は
支離滅裂

本心を
隠せなかった
隠したくも
なくなった


(2)

婚礼の日の
置き物の
雁(キロギ)の
ツガイじゃ
あるまいし

いったん
契りを交わしたら
伴侶が死んでも
一生独りを
貫くと言う
その伝説を

地で行くような
君に呆れた
じれったかった

逝った人の
記憶を抱いて
死ぬ日を待てると
言い切る君が
歯がゆかった

死者を
心に葬って
残った者が
生き直すのは
裏切りでも
罪でもないと
気づくなら

逝った人も
そう望むはずと
納得するなら

僕自身を
利用してでも
目を覚まさせて
やりたかった

いや本当は
僕を男と
見てほしかった

そしていっしょに
歩き出して
やりかった

事あるごとに
噛んで含めた
怒鳴ったことも
数知れず

「逝ったその人
以外の男は
誰も男に
見えないのか」と

肩揺すぶって
問いつめたのも
1度や2度じゃ
なかったはず

だけど雁(キロギ)は
強靭だった
つけ入る隙など
微塵もなくて

“芝居の相手”
“ゲームの敵”

それ以上には
決して僕を
近づけない

ましてや僕を
男としてなど
一顧だに
しようとしない

歯も立たない

そして
そろそろ
時間切れ

作品名:それが家門なら 作家名:懐拳