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鞠 サトコ
鞠 サトコ
novelistID. 53943
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魔女ジャーニー ~雨と出会いと失成と~

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 毎年、年末に各業界の事業主から送られてくる計算書には、その年の売り上げが載っている。ウィンターズ家も、洗濯魔法で成功して以来、好調のようであったが、マリオット家はそれ以上だったとか。
 ホリーはメイドたちの話していた噂を思い出した。
(普通のとこなら委託するような業務も、全部一からおやりになるから、それだけ利益もあるってわけね。なるほど……。まぁ、それにしても、魔法屋と建設じゃ、比較するには不釣り合いね)
 そんなことを頭の中で考えていると、ピエールが訝しむような顔をしてきた。
「ホリーさん?」
 慌てて胸の前で手を振って否定する。
「いえ、何でもありませんわ」
 ピエールはしばらく怪しむようにこちらを見つめてくるも、数秒で目を離した。
「そうですか」
 相手の顔が遠のくと同時、爽やかな香りがほのかにホリーの鼻腔を癒す。
 ホリーは言われるでもなく、ピエールと向かい合うように掛けた。
「マリオット家の長男である僕が剣士なのは何故だろう? って、今、思われたでしょう?」
 不意の問いに、ホリーは些か驚かされる。
「え? な、何を仰いますの?」
 ピエールの視線が一瞬、こちらに向けられる。
「お顔を拝見するに、違ったようですね」
 彼の視線は車窓の向こうのシルバースカイへ向けられた。
「どうか、これから僕の話すことは聞き流してください」
 こちらの返答は待たれることはなかった。
 教えてくれたのは、剣士道は、王家とのつながりを持つ条件として、一族の男子皆がやるようにとの命を女王より受け、それを今も受け継いでいるから、ということだった。
「なるほど、そんな理由があったのですわね」
「真剣にお聞きいただきありがとうございます。まぁ、今話したことは、僕とホリーさんだけの秘密です。他言は控えられるよう願います」
 秘密――。どこか魅惑的な言葉に、ホリーはドキドキしないでもなかった。
 ホリーの胸の懐中時計は、午前十一時をさしていた。