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妖精のブラ

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想い出す白い布



ルルは時々想い出す。
人間とあの白い小さな布を。
そして時々自分の胸を撫でて見る。
ほとんど起伏の無い胸を。

行動も普段とは違ってきて、ルルの仲間達は「どうしたの何か悩みでも?」などと訊くのだった。
そんな日が続いているうちに晩秋になっていた。ルルは原始の森の色づいた木々を眺めながら色々試していた。その試すこととは黄色い葉を二枚胸に当ててみること。しかしどの葉も満足できなかった。一番満足に近かったのはヤマイモの黄色くなった葉だった。蔓についているのでそのまま胸に巻いてもみた。でも、微妙な湾曲が無いのは不満だった。もちろん自分たち妖精族の誰も膨らんだ胸の者がいないし、胸に布なんてつけていない。

そんな想いが強かったせいか、ルルは自分の胸が少し膨らんできたような気もした。そうなるとますます人間のように胸に布をつけてみたいと思った。

ルルは今まで葉ばかり探していたが、木の実、草の実が盛りだからそれらを探し始めた。赤い木の実が目立つが丸い玉ではしょうがない。アケビも駄目だ。なかなか見つからない。原始の森を飛び回って湿地帯の側でそれを見つけた。大きさといい湾曲の線も美しくこれしかないと思った。

よく見ると細かい毛があり先が鈎状に曲がっている。だから胸に当てる紐なしでも落ちなかった。それを胸に着けたあとルルは甘酸っぱいような、少し悲しいような感覚に襲われた。枯れ葉が目の前を舞い落ちてきた。見上げる空は青色。光を通して見る木の葉の色がいつもより綺麗に見えるとルルはそう思った。


作品名:妖精のブラ 作家名:伊達梁川