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私の読む 「宇津保物語」  楼上 上ー2-

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 宮の君・源氏の君達でみんな背丈が同じぐらいで五尺ほどあり、犬宮と同じ年頃の六人の子供がいる。子供達に裳を付けて正装させて犬宮の遊び相手にさせている。

 この者達以外には犬宮を見せなかった。

 祖父の兼雅が会いたいと言っても、決して犬宮に会わせない。

 帝も、先に読み差しになっている文書を続いて朗読して貰おうとするが、あれこれと言い訳をして仲忠は、重大なことでなければ参内を遠慮したいと申し上げる。

 仲忠は京極に行って心静かに敷地内を歩くと、世の中にある、あらゆる草、木、花、数多くの紅葉があり、唐國から持ち帰った実が珍しく咲き実り、花紅葉、珍しい草木を以前に植えておられたのが築山の所々に面白く何とも言えない姿で生い茂っている。一面趣のある落ち着いた眺めだな、と仲忠は見ていた。

 仲忠は今心が落ち着いてゆっくりと眺めて居られるこれ以上の場所はない。年を経た岩は色々な苔が貼り付いて珍しく趣きよく前に大きく立っている。あらためて岩を動かすこともない。

 京極の家は元々有名な宮がお建てになったものであるから、今も勝れた建物であ。

 この三月十日頃から造りにかかろうと、修理大夫は一宮の乳母の兄弟であるので、建造を依頼する。寝殿の北の対、西東の対は特に美しい建物である。四方に廻らす垣は白壁にすることにした。

 この西の対の端に先祖の墓があった。後に念誦堂を建造した。

 南の山の花の木の中に二つの楼、長さ高さを頃合いにして直ちに建造すること。西東の対に倣って二つの楼の間に高い反り橋を掛けること。北南に格子を作ること。そこを自分の居室とする。仲忠は、

「この楼を作るには普通の大工では出来ないだろう。修理司に働く者の中から勝れた大工を廿人選んで、十人づつに分けて特に注意して造るように」

 と言って画家を呼んで造るべき楼の予想画を書かせる。

 東対の南の端には、広い池が流れ込んでいる。その上に釣殿を造る。池の流れ込みを州浜のようにして、前の南に中島がある。その中島に楼を建てること。

「御殿の高さを、外から見ると南に木が茂っているから、御殿は木の隙間から遙かに見えることになる。

 西東の方角から見ると、柳の木が茂る上に楼は高く面白く見える。面白い構図ではないか」

 などと言って人々は興味を持って京極殿造営を見ている。

 楼の高覧や特に目立つ内部の造作には、蔵開きで見付けた蘇枋や紫檀で造らせる。その他、旧殿の部材を使うところは銀や金で塗り替えをする。

 細い木材をやっと外が見える程度の隙間を造って並べた窓の格子は、白、青、黄色の沈木で造らせる。

 肝心なところは金銀で造る。仲忠は京極に出向いて門の鍵を閉めて内側に入って工事の進展を見つめている。勝れたその道の名人達が競い合って立派な良い物を造り上げていく。

 この事を帝、朱雀院、嵯峨院、殿上人達が聞かれて、

「これは珍しい面白いことだ」

 と、涼中納言、行正中将が行き会って、

「仲忠の処はいつも変わった珍しいことが起こるところだね。きっと何か仔細があるのだろう」

 と、興味を持って立ち話をする。 

 藤壺の女房孫王の君の姉妹に当たる四の君が犬宮の乳母の宮の君とお寺に参詣して出会い、

「殿(仲忠)が犬宮に琴を教えることで嘆いておられた、とほのかに聞きましたが、僅かな琴の音を聴くよりも結構なことだと思いましたよ。

『殿が今まで教えなかったことは残念だった』

 と、お嘆きになるのですが」

 と、犬宮乳母の話を藤壺にしているところに帝がお出でになた。藤壺は、

「一宮(仲忠の北方)は何と思いになっておられましょう。大騒ぎで造っている京極の楼は、大層珍しいもので御座います。

 内侍督を迎えて犬宮に琴を教えるのを、一宮は側でお聞きになるのでしょうが、このような教え方はまだ世間にはありません。久しい前から仲忠の琴を聴きたいと思っていましたが、私にはとうとう聴かせて貰えませんでした。

 惜しんで聴かせない演奏の手を、この際全部披露されるでしょう。羨ましいことです。どんな事より仲忠が惜しみなく琴を弾くのを聴けるいうことは、これ以上の幸福なことはありません」

 と、帝に訴えられる様子は不機嫌そのものである。

 藤壺の言うのを聞いて帝は、仲忠の造営中の京極の楼は素晴らしく滅多にないものであろう、と思いになったが、そうは言わないで、

「犬宮がすっかり仲忠から教え込まれ琴の手を総て取り込んだときに、私の跡を継ぐ春宮の世になってお聴きになってはいかがですか、飽きるほど聴かれますよ。きっと私の思っている通りになりますよ。

 仲忠のことになると貴女は不機嫌になる。私はそれが辛い。これ以上腹立てられる前に退散いたしましょう」

 と、藤壺の前を去って行かれた。

 こうして、楼に登る呉橋(くれはし)は色々な木を材料にして趣味深く美しく立派に造り上げて、下を流れる水で涼しく感じるように架けられた。

 楼の天井は、鏡形(六角)や雲の形の高麗錦の織物を貼った。板敷にも錦を貼られた。

 自分の座るところは、唐綾の薄い物を天井や床に貼る。

 西の楼は、内侍督(仲忠母)の御座所。

 東の楼は犬宮の御座所である。

 犬宮は小さいので、夜寝る帳台の浜床(はまゆか)は低く造る。その他犬宮の調度はこじんまりと造る。

 浜床とは貴族休寝用の台。周囲に柱を立て帳を垂らすので帳台(ちょうだい)ともいう。

 犬宮の浜床は、紫檀、浅香(せんこう)、白檀、蘇枋で拵えて螺鈿を鏤め宝石を貼り付けた。三尺の屏風四帖、唐綾に唐人の姿を描いたのを仲忠自身で表装をする。一双づつ二つの楼の浜床の後ろに立てる。

 浜床は、貴族休寝用の台。周囲に柱を立て帳を垂らすので帳台(ちょうだい)ともいう。

 楼の天井に三尺の唐紙天井を取り付けた、内侍督の座、犬宮の座の上にも同じ物を架けた。香木を使って香りを良くしている。

 細かく飾り付けをし終える。造作を終えて関係した大工や飾り師その他関係した者みんなはここのような立派で見事な工事を二度とすることはないであろうと思った。

 仲忠は、自分も満足がいくように造り上げた様に、母君をお連れ申してそのお喜びになる様子を暫くの間でも見ることが出来るのも、犬宮がそこで琴を弾くのも、立派なことで、いい加減に扱いはしたくないと考えて、この度の大造作をしたのであると心を引き締めた。

 この京極の邸宅のことを聞きつけて人々は仲忠の深い心を知らないので、

「このような立派な楼をお作りになって、何をなさろうとするのだろう」

 と、みんなはこの楼を建てた理由を知りたがる。

 楼から一、二丁離れたところを通る人は、永い年月色々な香りを浸み込んだ錦や綾で飾った楼から来る風の薫りに感心して不思議に思う。


 仲忠は朱雀院に参上すると、院は、

「古い京極に珍しい美しい楼を建造したのは何か理由があってのことかな。殿上人達は、『変わったことをする』などと言っているが」

 仲忠
「別に理由などは御座いません。京極は静かなところで御座いますから犬宮がそこで琴を習うといいと思いまして。内侍督が申しますのに、