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人でなし(?)の世界にて

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第5章 調達



 翌朝、格納庫に、起床を促すサイレンが鳴り響く。長年の軍隊生活のせいか、アンドルーズも自然な感じで起きる。すぐ横にいるヒゲ男や他の者たちも、ゆっくり起き始める。
「おはよう」
「ああ、おはよう。今日からお前も仕事だろ? 朝飯はしっかり食べとけよ」
今日からアンドルーズも、この新首都の労働者の一員なのだ。


 艦内にある広々とした食堂で、配られた朝食を口にするアンドルーズ。メニューは、コーンフレークと牛乳とアメリカンコーヒーだった。貧弱なメニューにアンドルーズはげんなりしたが、おかわり自由だったコーヒーを、気休め程度に多く飲んでおいた。

 前にも述べたが、新首都における仕事の勤務先の多くは、リザードマンが跋扈する陸地だ……。だが、食料調達のためにも、文句など言っていられない。働かなければ、リザードマンとリングに立たされる……。
 アンドルーズたちは順番に、大型輸送ヘリに乗せられる。『シースタリオン』という愛称が付いているヘリコプターだ。アンドルーズは、州軍の陸軍に所属していたので、陸軍では運用されていないこの軍用ヘリには馴染みが無かった。ただそれでも、軍用ヘリに乗り込むことには懐かしさを感じていた。
「まるで任務だな」
アンドルーズたち労働者や護衛の兵隊を乗せたヘリは、空母から発艦し、陸地へと向かう。今日の目的地は、内陸にある農場だった。


 ヘリは、海沿いの町を越え、農業地帯の空を飛んでいた。荒れ果てた農地に、自動式のスプリンクラーが雨を降らせている。リザードマンに食べられたりした家畜は、骨となって地面に散らばっていた。
 道中、人間はどこにもいなかったが、リザードマンはあちこちにいた……。もはや、この世界の支配者は、ヤツらリザードマンとなっている……。
「よし、あそこに着陸しろ」
「了解」
マッチョ男の指先は、ある農場を指差していた。リザードマンが近くにいない農場を選んだようだ。
 いくつか建っている建物の近くに着陸するヘリ。地面に落ちていた藁が、ヘリの強風で吹き飛ばされていく。

 まず、護衛の兵隊がヘリから降り、周囲を警戒する。マッチョ男が、彼らの指揮に当たっている。
「住宅を制圧しろ!」
赤茶色の屋根をした3階建ての家に突入していく兵隊。彼らの銃は自動小銃ではなく、大口径の銃弾を使用する対物狙撃銃『バレット』だ……。
 銃声は鳴らず、しばらくすると、3階の屋根裏部屋の窓が開き、
「制圧完了!」
兵士が手を振る。
 兵隊は、他の建物も制圧していったが、リザードマンとの遭遇は避けられたようだ。制圧を終えた兵隊は次に、周囲の警戒に移る。
「よし、作業にかかれ!」
アンドルーズたち労働者の仕事が始まった。