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人でなし(?)の世界にて

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第3章 旅路



 アンドルーズの車は、街の歩道を走行していた。完全な交通違反だが、車道が放置車両でまともに走れないので仕方がない。ただ、歩道にも放置車両などの障害物があり、それを避けるためにスピードを落とさなくてはならなかった。スピードを落とすたびに、彼は周囲に目を配る。
 リザードマンの多くは集団行動を取っているらしく、単体のリザードマンはあまり見かけない。単体で行動していたリザードマンに一度遭遇したが、ターボ付きの赤いスポーツカーには、さすがのリザードマンも追いつけない。すぐにバックミラーから姿が消える。
 彼はハンドルを握りながら、亡き妻との思い出があるこの車を売らなくて良かったと思った。この速いスポーツカーは2人乗りで、助手席に妻を座らせ、あちこちへよくドライブをしたものだった。ちなみに、今助手席に座っているのは、水や食料の残りだ。その足元には、自宅から持ってきたショットガンや弾薬が置いてある。たぶん、何匹かのリザードマンはこれで倒せるだろう。

 走っても走っても、街中に人気を感じることはできなかった。検問所やバリケードを何か所を見かけたが、そこにも誰もいなかった。放置されている兵士の残骸は、リザードマンにやられてぐちゃぐちゃだ。もしかすると、アンドルーズの同僚かもしれなかったが、顔すらも確かめようがない。
 兵士の死体とともに武器も放置されていた。血で汚れているが、拭けばなんとかなるだろう。しかし、車から降りてそれらを集めるのは危険で、悔しいがあきらめるしかなかった。
 通りすがりに、ハイウェイのインターチェンジ付近を見かけたが、道路の高架は完全に爆破されていた……。最初からハイウェイをあてにしていなかったが、落ち込まずにはいられなかった。やはり下の一般道を走るしかない。


 ようやく街の中心部を抜け、郊外へ出ることができた。この辺りは新興住宅地になっている。道路の両側には、まあまあ広い庭のある一戸建てが建ち並んでいる。先ほどまで街中よりかは、放置車両などの障害物が少ないため、歩道ではなく車道を走ることができる。
 しかし、ここにも人の気配は無い……。多くの庭に死体が転がっており、芝生を血で赤く染めている……。荷造りで逃げ損ねたと思われるミニバンの周りには、荷物と肉片が散乱していた。
 ある家の中にリザードマンの姿があったが、幸いなことに昼寝していた。逃げ切れるだろうが、寝顔をじっくり観察している余裕は無い。リザードマンは他にもいると思われるので、ここも早く通り過ぎねばならなかった。
 目的地であるオークランド港は、前方に見えるあの山の向こうだ。救助活動がデマでないことを祈りながら、アンドルーズは車を急がせた。