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水族館

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何処かにまだ残る夏の香り。
独書室の窓を開けていると 風の向きが変わったのか優しい風がカーテンを揺らす。
この夏はどんなことがあるのかなぁと胸ドキュンとなるはずだった夏の後ろ姿を見ているボクが居る。

今朝は、すっきりと目覚めた。

数日前まで 夏休みの所為で前倒しに忙しかったり、休み明けでまた仕事に追われたりと仕事をした。ありがたいとはいえ、その所為でボクは背中にいるキミの存在だけしか感じられなかった。朝といい、夕といい、暑さにぼんやりしそうな頭をフルに活動させたし、ふとしたうたた寝にお気に入りの万年筆が 気ままな線を原稿用紙にアートしていた。
ともあれ 忙しかったがその甲斐あって 一段落できたのかな。
そんなことを 思いながらボクは、身支度をして部屋を出た。

今日は久しぶりに電車に乗っている。

とにかく近頃のボクは 部屋に閉じこもりっきりだった。たまに部屋から出るのは お腹が空いてコンビニに行く程度だった。キミが部屋に来てくれてもそっと帰って行く。背中で感じてはいても何もしてあげられなかった。そんなボクにキミが言った。
「仕事が 熱出してるよ」
心なしか ボクを見てキミが心配そうな顔をしていた。
不健康の塊に見える…って いつも何も言わないキミが言うくらいだから よっぽど酷い顔をしていたんだろうな。
だから区切りをつけて 今日はこうして電車に揺られているんだけど……。

「お出かけにゃん」
彼女が選んだ目的地はというと、海の近くにある水族館。

ボクの不健康の解消が先なのか、水族館に行きたいキミの気持ちが先なのかと考えてみると、まぁ水族館が優先されているような気もするが、それでもいい。
ボクも水族館は好きだ。
こんな良い天気の日に水族館は悪くはない。キミとは水族館の前で待ち合わせ。
あれ?
でも、なぜだろう。いつもはボクの部屋から一緒に出かけるというのに、今 ボクは一人電車に揺られている。ボクはそんなことを不思議に思いながらも、仕事のアイディアを思い浮かべていた。

作品名:水族館 作家名:甜茶