小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

初恋はきみと

INDEX|2ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 


咳をして苦しそうな声が背中から聞こえる。慌てて佐里を呼びに行くと、祖母は落ち着いた動作で体温計を探しだして瑞の枕元に座った。

「瑞?しんどいの?」
「・・・喉が痛いのと、身体が痛くてだるい」
「風邪かしら」

体温計は38度を示し、佐里はまあと眉根を寄せた。

「佐里・・・何なのこれ・・・」
「風邪ですよ。栄養をとって、あったかくして、寝ていれば大丈夫」
「しんどいよ・・・」
「そうね、かわいそうに」

皺だらけの手が優しく瑞の額にのせられる。瑞が安堵したように目を閉じるのを見て、伊吹は不思議な気持ちになる。瑞は佐里に、こんな弱い自分を見せるのかと、意外に思うのだった。伊吹や穂積の前では見せない姿だ。

「氷枕と、それからおかゆを作ってくるわ。お薬もまだあったと思うのだけど」

寝ているのよと言い残し、佐里が部屋を出て行く。

「・・・寒い」
「あ、毛布出してあげる。先週干して、押入れに入れといたやつ・・・ほら、あった」
「・・・すまん」

弱っているせいなのかやけに素直だった。気持ち悪いと思いつつ、熱のせいでかわいそうに、と伊吹は同情しておく。枕元に座る伊吹に、目から上だけ布団から出した瑞のくぐもった声が届く。

「おまえもああいうのを嫁にもらえよ・・・幸せにしてくれるぞ・・・」
「は?」
「佐里みたいな、だよ」

枯れた声でそんなことを言う。黙って眠っていればいいのに。弱っていると饒舌になるのか?それとも話がしたいのだろうか。

作品名:初恋はきみと 作家名:ひなた眞白