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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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「かまかけただけだ。確かに探ろうとはしたが邪魔が入って何も出来なかった。何か無くなったんなら奴らの仕業だな」
「奴らって誰だ!」
 瀬里奈の興奮が収まらないので俺は極力ゆっくり穏やかに話した。
「声がでかいよ。多分あのデーブって刑事と息のかかった奴だ」
「警察?」
 青ざめた。やはりか。
「さっき署長に電話しといたんだ。お宅の刑事はすごいな。夜中パトロール中に銃声聞いて学校内の倉庫の中だ、まで特定できるんだからとな」
 したらば、さすがはシェリフ。俺より先に気づいてて奴はすでに取調室らしい。
「で、何を捕られた」
 俺は一拍あけ続けた。
「麻薬か?」
 瀬里奈は言葉を失った。図星か。
「そんな物、あるはずが……」
 俺は無視して続ける。
「最近、中高生の間で麻薬が流行っている。だが何故かこの学校だけはそんな噂が全くない。いくらキリスト教学校だろうが逆に不自然。誰かがもみ消している可能性がある。お前らは俺が訪ねていっただけで殴りかかってきた。ヤクザだってそこまでそうそうしない。何か隠し事がある、びびって逆に襲い掛かったんだろう。お前の今の言動からして「物」を隠していたのは明白だ。昨日俺は倉庫で襲われた。素人の高校生の仕業じゃない。高度な装備を持ってドーピングまでしたプロだった。どっかの裏組織が関わっている証拠だ」
 まくしたてて一息つく。
「総合するとヤクザが麻薬をこの街にばらまいている。この学校を拠点、隠れ蓑にして」
 瀬里奈の反応を待つ。やつはため息をついた。
「正解。ただのバカじゃないんだ」
「お前の親父さんの仕込だ」
 それとバカじゃねぇ、悪党だ。
「松岡はお前が麻薬に関わっているのを知って俺に止めさせようとしたんだな」
 瀬里奈は瞳を伏せた。
「多分…… そうなんだろうね」
「すぐに手を引け。お前が関われるような事じゃない」
 俺は声のトーンを変えた。
「たとえお前でもこの街に麻薬ばら撒くような奴は許さない。ここは俺の街だ」
 瀬里奈は俺の殺気に硬直し顔を背けた。
「やっぱり…… バカだね」
「?」
 声から、表情からも感情が消えていた。昨日最初に会った時の様に。
「私は麻薬を隠していた。だけど使っても売りさばいたりもしてやいない」
 嘘のようには聞こえない。読みが違ったか。
「ならなんで麻薬なんか隠してた」
「はなっから疑ってるような奴には話せない」
 冷たい声。気丈な足取り。しかしその背中は少女そのものだ。
「待て」
 一応止めてみた。立ち止まってくれた。振り返りはしなかったが。
「疑われるのを人のせいだけにするな。人に自分を理解してもらおうなんざ贅沢の極みだ。ましてや腹を割って語りもしないで疑われたのが気に入らない? 無茶言うな。俺は顔は広いがテレパスなんか知り合いにいない。理解して欲しいなら向き合って目を見て話せ」
 瀬里奈は少し考えて静かに言った。
「話してどうなる。どうにかなるのか」
 なんでそう強がる。
「お前はどうにかできるのか? お前の敵は手ごわいぞ。俺は昨日撃たれた。防弾チョッキと仲間のおかげで助かったが死ぬところだった。ガキの頃から松岡に仕込まれた俺でもだ。お前じゃあっという間にあの世行きだぞ」
 死という言葉に反応したのか。瀬里奈は思わず振り返った。
 だが表情はすぐに消えた。
「話せ。お前がやばい事に関わっちまってるのはわかった。どんな厄介事でもいい。もう一度言うが俺はお前を守りに来たんだ」
 瀬里奈はまた目を伏せた。今までとは打って変わった小さな声で問いかけてきた。
「私達じゃどうにもならない。どうしたらいい?」
 俺は声のトーンを「幼馴染」に戻した。
「俺は便利屋だ。頼むと一言言えばいい」
 瀬里奈はしばしの沈黙の後、無感情というより感情を押し殺して棒読みで言った。
「頼む」

 瀬里奈は夜中校内に見知らぬ男が入ってきたのを見た。男は校内で待っていたもう一人の男と二人で体育館内にある体育教官室に入った。寮は消灯時間、そもそも体育館は人も立ち入らないし寮からも見えない。なるほど不良学生でもなければ夜中に体育館周りになど足を向けないか。
 教官室はもちろん体育教官の職員室だ。だがこの学校の体育教官はどうにも柄が悪いのが多くヤクザっぽく見えるため生徒達は「ジムショ」と呼んでいるそうだ。小森先生を見ればなんとなく納得がいく話だ。
 教官室は鍵が掛かっている。スムーズに入ったそうだから学校関係者に違いないだろう。不振に思い隠れて覗くと取引をしていた。言うまでも無く麻薬の取引だ。
 麻薬は教官室に隠され男達は去った。瀬里奈はそれを証拠として盗み北の倉庫に隠したという。
「なんで警察に行かなかった」
「行ったよ」
 朝になって瀬里奈は当時の瀬里奈のグループのリーダーに相談した。白井健吾という名だそうだ。
 白井は思案の挙句直接警察に赴くことにした。普通の高校生なら親か教師に相談だが彼らは日ごろの行いが悪すぎた。麻薬事件の相談などしたら、あらぬ疑いをかけられるかもしれない。そこで直接警察に行ったのだ。
 白井健吾はリーダーらしく男気のある奴だった。一緒に行くという瀬里奈を説き伏せ、自分が発見した事にしろと言って単独で警察署に赴いた。
 結果、番長は逮捕された。
「死んだわ」
 瀬里奈は顔を伏せた。拳がきゅっと握り締められている。
「麻薬中毒者にされて……」
 逮捕したが禁断症状で死んだ高校生。あいつか! ラーメン屋の情報にあった。だがピース学園の生徒とは聞いていない。学校の裏サイトに噂すら載っていない。いや……
「転校した不良グループのリーダー?」
「それだよ。リーダーはずっと前に転校したことにされていた」
 信じがたい事だ。学校関係者が絡んでいれば登校も稀な不良生徒の一人くらい転校した事にも退学になった事にもできるだろう。
特にここはキリスト教系の私立高校だ。
体面を守るためにそのくらいの事はやるかもしれない。
しかし人の口に戸は立てられない。いくら戒厳令を敷いたところで今やネットと言うものもある。噂位は流れるものだ。
「いくらネットに書き込んでも、あっという間に削除された」
 それが本当だとすれば敵には強力なコンピューターネットワークの専門家「ハッカー」がいる事になる。手ごわいが逆に手がかりになるか?
「リーダーは私をかばって警察に消されたんだ」
 口封じ。デーブ刑事の仕業な事は明らかだ。奴はすでにシェリフが捕らえている。事の真相に近づけるだろう。
「この事を知っているのはこの間の連中、お前の仲間だけか?」
 瀬里奈はうなずいた。
「で、教師も警察も当てにならない。お前らだけでなんとか事件を暴いて番長の仇をとろうとしていた。そうだな?」
 またうなずく。ため息をつきそうになり堪えて指示した。
「すぐに全員呼び出せ。近くにマンションを借りてある。そこに集合だ」
 またうなずいてメールを打った。最初からそのくらい素直だったら話も早かったのに。
 ところでメール打つの遅いなぁ。最近の女子高生は大概マッハで入力するぞ。パソコンとか相当苦手なタイプだな。
 送信した後、俺は午後の授業はエスケープする事にした。