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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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 コーツは二階の自室にコールマンを呼びつけた。すると事もあろうに娘まで連れて部屋に入ってきた。
「君は事態を理解しているのか? 君は今指名手配中だぞ。君と私に繋がりがあると思われたらはなはだ迷惑だ!」
 コールマンはこの言葉に喚いた。
「無いと言うんですか! 私はあなたの指示にしたがって動いただけだ。今だって、あなたの名前が出る前に処置をしようと!」
「今更そんな娘を捕まえてきてなんになる! 君の事はすでに公になっているんだ。私はその子が誰かさえ知らんが」
「ローランドの娘ですよ! あなたが消せと言ったローランドの。こいつはローランドが隠していた我々の悪事の証拠を持っていた! そしてそれを今持っている奴らは王子様気取りでこの子を助けようとしている! 人質として十分餌になる。おびき出してボーチャードが奴らを始末すればあなたの事は明るみに出ない。現に今食いついてきたガキをあいつが始末しているところです!」
「だからと言って何故ここに連れてきたのだ。お前と私の繋がりが知られたら全て終わりだとわからんのか!」
 大人達のののしり合いを傍らで見ながらジュンは恐怖より侮蔑の気持ちを強く感じていた。
 自分を誘拐してきた男は我を忘れていた。追い詰められて正気を失っているとさえ見える。頭のよさそうな人間に見えたが事態に対処できないのだろう。
 館の主の方はテレビで見たことがある。確か大物政治家だ。話の根本はわからないが、この男と組んで悪事を働いていた。父も殺した。その罪を男に押し付けて逃げるつもりのようだ。父もこんな風に切り捨てられたのだろう。
 なんて醜い大人だろう。
 子供を前にして自分の立場だけ守ろうとあがいている。父もそうだったのだろうか。自分は見てはいけない世界を見てしまったのか。BIG-GUNのみんなが言ったようにおとなしく家に帰ればよかったのだ……
 彼らは確かに自分に嘘をついていた。
 何故、どんな嘘をついていたのかはわからない。だがそれは決して自分に悪意あってのことではなかった。今頃そう思えるようになっていた。
 風見健、彼はセクハラまがいの軽口ばかり叩いていた。しかし決して自分に近づこうとはしなかった。何故? そこに嘘をつかなければならなかった原因があるのだろう。
 彼が女の子を連れている事は無いとみんなが言っていた。あれほど町中の人に愛されていた少年が。
 彼は女の子に好かれないのではないのだ。ただ近づけないだけ。
 彼は、彼らは無事だろうか。
 ベンは自分を守って撃たれた。助かるだろうか。
 あの殺し屋が、父を殺したルガーの殺し屋が自分を餌に彼らを狙っている。誰かを始末しているとあの男は言った。
 恐ろしかった。自分のせいで彼らが傷つくのが。
 助けに来て欲しいという気持ちとこないで欲しい気持ちが両方ジュンにはあった。
 その時コーツの電話が鳴った。非通知。
「もしもし?」
「ヒガシ・コーツ議員だね?」
 若い声だった。
「君は?」
「よくご存知かと?」
 コーツの血の気が失せた。
「そこに女の子がご厄介になっていると思うけど」
「知らんな」
 内心狼狽してはいたがそこは国会議員だ。表には出さない。
「指一本触れるなよ」
「なんの事かわからんな。大体ここがどこだか君は知らんのだろ?」
「ここだよ、ここ」
 同時に1階から爆音が聞こえた。窓の外から煙が立ち込めている。
「ローランドもここは知らないはず…… と思ってるでしょ? 薬屋のおばさんは知ってたんだな。裏切るはずがない? 還暦過ぎた親父より若い恋人の方が大事だったみたいだよ」
 電話は切れた。コーツは電話を落としてしまった。
 馬鹿な、何故こんな事になる。
 今度の事はちょっとした実験、嫌がらせ、いや悪戯だったはずだ。
 なんでこんなやつらのために私が、私ほどの男か!
「奴らか! ボーチャードは何をやってるんだ! 下の奴らは!」
 コールマンは部屋を飛び出していった。
 ジュンにはわかっていた。
 来た。
 BIG-GUNだ。

 街の北部、緑が多々残る丘陵地帯に今回の黒幕の隠れ家…… まあ別荘だな、はあった。名義はベイファンの鈴木同志。2階建て、庭、家共にかなりでかい。まさに豪邸。三郎が探ったら奥さんあっさり場所を教えてくれた。
ラーメン屋からの情報で家の大体の間取りや、普段いる人間たちも把握している。ボディーガード代わりに例のセミナーの若い奴らが10人ほどが最近常駐しておりコールマンもたまに顔を出すと聞いている。
そして何と言っても怪しげな中年男が入り浸っているというのが決め手だった。
あいつ、震える殺し屋のことだ。
あたりはもう暗くなっていて視界は悪くなっていた。加えてたったいま三郎がスモークグレネードをぶちこんだので肉眼ではしばらく何も見えない。俺達は赤外線暗視鏡を装備していた。スモークグレネードは煙を吐くだけの代物だ。ジュンが巻き込まれても問題はない。まぁ文句は言うだろうがな。
 俺は戦闘服に着替えていた。ガンベルトには拳銃、スタングレネード3つ、サブマシンガン予備弾倉3をつけてサスペンダーで吊る。サスペンダーにはコンバットナイフも差してある。
 拳銃はベレッタM84では心細いため世界最高のコンバットオート「グロック17」を選んだ。
 20世紀の後半に発表された野心作で発表後の拳銃達に多大な影響を与えた。17連発という多弾装。ヘキサゴナルプロフィールといわれるパワーロスの少ないライフリング。セーフシステムと呼ばれる他に類を見ない機構。そして何より特徴的なのはフレームがポリマー樹脂製ということだろう。
 ベレッタと比較すると無骨極まりない野暮ったい銃だが9mmパラベラム弾を使用するこいつは威力的にも頼れる奴だ。
 とはいえこいつは予備兵器でメインウェポンはさっきも使ったH&K MP5。今回はフルサイズでサイレンサー付のSD6タイプを使用する。
 おつむには赤外線暗視鏡をかぶった。もう夜なのだ。
 最後にショルダーホルスターにグロックの予備弾倉とお守り代わりの拳銃をもう一丁吊るしておいた。
 さて行くか。無線で相棒に呼びかける。
「三郎、いくぜ」
「おう」
 大きく息を吸って、吐き走り出す。赤外線スコープには室内で右往左往する人影が映し出されている。赤外線を映す暗視鏡なので壁も透けて熱を発生している人影が赤く動いて見えるのだ。そのうちのどれがジュンなのか、ま接近すれば小さいからわかるだろう。俺と反対側、裏口のほうへ走る影が見えた。三郎だろう。裏は入り口が少ない。俺が先に突入したほうが奴は入りやすいだろう。俺は庭へまわり人影の少ない窓を撃った。サイレンサーで発射音はかき消されている。俺の位置はわかるまい。煙幕の中やつらは窓ガラスが割れた音に引き寄せられ部屋に入ってきた。3人入ってきたのを確認して部屋の中にスタングレネードを放り込んだ。
 閃光と大音響がとどろく。
 殺傷力はないがまともに食らった奴らは悶絶して倒れた。目はくらみ鼓膜もやられて失神している。当分行動不能だ。
 残っていた連中は二手に分かれた。しぐさからして皆拳銃を抜いたようだ。廊下から部屋に向かう者、それから庭から向かおうと外へ飛び出してきた二人。