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宝の地図

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亥 百年前のメッセージ



 蔵の金庫から出てきた一枚の紙切れは、宝の地図ではなかった。だけど、その謎が解けたことは、ゲームのシナリオを終えたよりも充実したものがあって、ふと気が付くとつい先日の事を振り返っている自分がいることがしばしばあった。
 「でこぼこ調査隊」は解散し、私はやりかけのゲームをするのも忘れ、机に座ってこれまでの調査をレポートにまとめていた。百年前から現在までの町の移り変わりやそれに至る歴史。かつてあった徴兵という制度や当時の恋愛事情まで……。
 あれから先生は乙浜の実家に残り、家庭教師も夏休みになった。明日に電車で甲山に戻ってくるそうだ。先生がいてくれたお陰で色々と勉強になった。普段教えてくれるのは英語と数学だけど、それ以上の事をいっぱい教えてくれた。試験に出る出ないは関係なく、それらは学校や塾では教えてくれない事だ。先生自身の一面も見ることができて、個人的には充実していた。私のワガママに文句一つ言わず協力してくれた二人には本当に感謝している。
 そんな訳で先生とは二週間ほど会っていないけど、メールをしたら他愛のないことでもちゃんと返事をくれる。

   * * *

「先生なら『遅れて来た便り』のモデルがキノヱ婆さんだと気付くと思ったんだけどな」
「小説でイメージが出来てしまったんだね。あれがすべて本当の話と思い込んだみたい。それで原作の小説は読んだ?」
「読んだよ。ビデオも見てダーダー泣いた。読書感想文の宿題も出来そう」
「でも何で地図とあの喫茶店が繋がったの?」
「ローマ字のAとキノヱ婆さんの遺影かな?昔の写真にローマ字が書いてあったのはあの建物だけだったし、昔から洋服が好きだったっていうから」
「凄いな、麻衣子探偵。女子らしい観点だね。今回の調査は得たものは大きかったようだ、金銀財宝はなかったけど(ちょっと残念)」
「確かに(ちょっと残念)。宝見つかったらクーラー買ってあげようと思ってたけど、無理っぽいね。ごめんね、先生」
「でも地図の正体が解って良かったじゃん。期待してるよ、夏休みの宿題」

   * * * 

添付の写真を見たら先生と弟の駿太さんが、爪楊枝を刺したキュウリとナスを仲良く持って「お土産アリガトウ」と書いている写真が付いていたので、部屋で一人笑った。駿太さんは昨日甲子園から帰ってきたみたいだ。おじいちゃんと一緒にテレビで乙浜高校の試合を見たよ、結果は残念だったけどね。明日は木曜だからちゃんと家に来てよ、ちゃんと宿題は済ませたから。
 ついこないだまで夜の外はカエルの大合唱だったのが、早くも虫の声が聞こえ始めている。その声を聞いて外を見ると、視界にはあの蔵が目に入った。今まで深く考えもしなかった大きな建物――、私はこの蔵があったことで自分自身のルーツについて色々と勉強になったと思うと、その存在に愛着のようなものが湧いてきた。壁に付いたバレーボールの跡を掃除しようかなと思うようになったけど、まだ出来ていない。

作品名:宝の地図 作家名:八馬八朔