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宝の地図

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 私たちは乙城記念公園に到着した。ここは県内でも一番大きい部類に入る野球場で、今日は先生の弟の駿太さんがいる乙浜高校が甲子園の常連校相手に初出場を賭けて対戦する。地元開催だけに公園周辺は異様な活気にあふれていて、お祭りのような賑わいを見せていた。
 長い運転で疲れが見えたおじいちゃんには先に球場に入って座って貰い、私と先生の二人で『城の跡形』を探すこととした。蝉の鳴き声が聞こえて来るけど、それ以上に球場の歓声が大きい。
 私たちだけが人の流れとは逆に歩く。その『跡形』は意外にすぐに見つかった。
「先生、これっぽくない?」
 私は球場の横に小さな祠があるのを見つけた。注意深く見てないと無視してしまうようなくらい小さく建てられたそれは、何も言わずにじっとそこに居続けているような感じがした。今までも、そしてこれからも。
 祠の横に「乙濱城趾」と彫られた小さな碑文がある。これによると昭和二〇年に戦争で焼けたようだ。
「え、これだけ?」
 正直私は拍子抜けした。地図は確かに百年以上前のものだから、今とは違っているかもしれない。ゲームだったらファンファーレがなるような発見を期待したのに、目の前にある単純な現実に力が抜けて行くのがわかった。
「当時ここは高台で、町が一望出来たんだね」
 先生はそう言うけど、ここから海辺の方を見ても、町の景色が一望出来ることはなく、駅周辺にある高層ビルが見える程度だ。
「昔はあの辺が川の河口辺りだったんだね」
言葉が途切れた。先生が私に気を遣っているのが何も言わなくても大体わかった。私は祠の前で力が抜けて、横にある石の上にへたれこむように座ってしまった。
「麻衣子さんどうしたの、疲れたかい?」
先生は心配そうに私に聞いてきた。 
「ここが宝の位置だよね、何にもないよ……」
せっかくここまで来たのに、この緊張感の出ない結果に私はがっかりして、つい本音がもれた。
「そうだね……」
 先生は疲れた顔一つせず、黙って私を見ている。何か言おうと考えている時の仕草だ。木陰の祠に球場の歓声が風に乗って聞こえてきた。
「でもよ、まだ諦めたら駄目だ。日没にならないとわからないかもよ」
 先生は笑いながら私に話しかけた。そう言えば地図には

   文丗日ノ日沒

って書いてたんだ。私は先生に小さく謝って立ち上がった。そういや私が困っている時ほど先生は優しい。
「野球見ながら考えよう。日没までまだ時間はあるよ」
 ここまで手伝ってくれる先生を困らせたくないので、私は元気を見せて大きく返事をした。先生がそれを見て微笑み返すと、不思議とさっきの残念な気持ちは忘れていた――。

作品名:宝の地図 作家名:八馬八朔