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ヤマト航海日誌

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2016.3.13 トーク・アバウト・ザ・ロング・サイド



前回ああ書いたけれども本当はエビはひとつで構わない。それよりナスを付けてほしい。あとマイタケがあるとうれしい。イカやキスを付けるんだったらいっそチクワの方がいい。天ぷらはタレよりツユで食いたいタチなものだからご飯よりもソバがいいな。どうか今後も細く長くのお付き合いを……なんてなことを書いてると、「お前、どこまで引っ張る気だよ」という声がどこかから聞こえてくるような……そこでいろいろ妥協してかき揚げうどんを食べながら、


「ソレイホさん、世の中には違法アップロードで稼ぐ〈業者〉ってのもいるわけでしょう。そいつらのせいでテレビ番組のスポンサーがちゃんと稼げなくなったりする。〈ケンちゃんカツ丼〉の提供で放送された番組が、天丼屋の広告付きでインターネットに出ていたら、そりゃケンちゃんは怒るでしょう。そういう悪い天丼屋はもちろん捕まえて吊るさなければいけませんよ」


「だから、ほんとにこの話、一体いつまで続くんだよ。マジに百杯タカる気なのか?」


「どうせおれは間違った側の人間ですよ。しかしあなたがCMで絞り上げてる連中は、カツ丼屋が打撃を受けるほどには見えない。古いビデオの映像は今のテレビで見られたもんじゃないでしょう。昔の番組の第一話をちょっと見ておもしろいと思っても、続きはHDリマスターで見たいというのが今の人間じゃないんですか? 少しくらい金を遣うことになってもね。むしろあなたがイビってるようなやつらのおかげで、古い作品のDVDがリリースされることもありうる」


「だからって勝手にアップロードしちゃいけないよな」


「はい。お代わりお願いします――おれが言うのはあなたのCMになんの意味があるのかですよ。おれは本を図書館で借りる人間で、本屋で買うことはない。しかしきょうびの図書館に行って、棚にズラズラ『永遠の0』が並んでいるのを見ると、『これってちょっとおかしくねえか』とやっぱり思う。

一年前にはあれが百人待ちとかいう予約状態だったわけね。それが今では〈ご自由にお持ちください〉のコーナーに《除籍済み》のシールを貼られて置かれてて、おれは一冊もらっちゃいました。人間、マジメに生きてると、いいことがあるもんですよ。

けれどもやっぱり、これはいかがなもんですか。巻紙広げて『これ、侵害です。』と訴える作家が結構いるそうだけど、図書館側は『予約待ちして借りる人は、どうせ買っては読みませんよ』と言っておしまい……。

まあね、おれには、別にどうでもいいことなんで、どうでもいいことなんだけど――って、予約して本を借りるなんておれはしないって意味ですが――確かに買って読まない人は、買って読むことはないでしょう。本の予約を受け付けている図書館員に、『それ、違法では。』とやったところで無駄なこと」


「貸す方より借りるやつが悪いって言いてえんだろ! だからってな」


「やれやれ、まだわかんねえのか。これはやっぱり無制限に予約を受け付ける図書館の方が悪いでしょう。なんで本のタダ読み屋の便宜を図る必要がある。なんでそのために税金を使う。予約待ちして本を借りようなんてするやつからは、本の値段の一割取って作家に送るべきなんだよ。なんでどうしてそういう話にならないんだ?」


「うどんお代わりって言いてえのか」


「そうなんです、お願いします――要するに、法律なんかほんとは全然関係ないっていうことだ。図書館で本を借りる人間は、おれを含めてどうせ買っては読まないんだから何を言ってもしょうがない。〈ヤマト〉のルールは古代ひとりがいいかげんに決めている。出渕裕がそれを良しとするために、間違った人間の方が正しくて、正しい人間が間違っていることになる。

ルールは常に、間違っている人間が作る。幼稚なアニメだけでなく、実社会でもそうなのだから、本当に正しいルールはこの世の中に存在しない。

法律はいいかげんなもんなんですよ、ソレイホさん。『2199』なんてもちろん、おれは映画館に行って見ないし、DVDを買って見ないし、レンタルショップで借りて見ない。何もせずとも地上波かケーブルTVで見れるときを待って見る。

はっきり言って世の90パーセントはおれと同じ人間だ。なるべく早くタダで見ようとネットで違法に探したり、図書館に予約を入れるなんてしない。あーあー、確かにソレイホさん、あんたがCMで絞ってるようなやつらは人間のクズですよ。クズが流しているものを見ているやつも同罪だ。

ガキのおれが〈少年キング〉を毎週立ち読みしてたのだって著作権の侵害だけど、それとこれとは次元が違う。だから人としてやっちゃいけないことがわからねえボケは、頭が悪いこと自体が社会の害で罪なんだからビシビシ取り締まれと言うんだ!」


「だからなんでお前の方がそれを言うんだ! 言うことがなんか違ってねえか?」


「いや、問題が複雑なもんで……だから、普通のマトモな人は、カネを払って見るべきものはちゃんとカネを払って見るってことです。『2199』なんかぜんぜん、カネ出して見るようなもんじゃないでしょう。細田守のアニメなら、人は劇場に足を運ぶし、DVDを買うかレンタルして大画面のテレビで見る。そうしたいからみんなそうする。ネットで拾ってPCで見るセコい野郎がいくらかいても細田守は痒くもない。

しかし出渕裕は違う。『逆襲のデスラー』や『パトレイバーDNK』を人はカネを払って見ない。『実写ヤマト』はまあキムタクが主演だから人は見たよ。おれも見た。カネを遣って損したというほどの気はしなかった――言っとくけどホモじゃないよ。けど『逆襲のデスラー』なんて、最初から、キモ男と腐女子以外に一体誰がカネを出して見るんだつーの。

あ、オウム真理教徒が見るか。でもせいぜいその程度でしょ。出渕裕が作る映画は映画じゃない。映画館での興行で元が取れない映画を映画と呼ばんでしょ。細田守の倍のカネを遣って収益は百分の一。でもフィギュアと抱き枕が売れているからいいんです。テレビ番組のアップロードは違法です。DVDを買いましょう。『2199』全巻揃えたアナタにはさらなる特典が待っています。タダ見したならソレイホ刑事に捕まって、結局、人生損するのです。

お布施するぞーお布施するぞーお布施するぞーお布施するぞー、もっともっとお布施するぞー、もっともっともっともっともっともっとお布施するぞー……って、ねえソレイホさん、あんたさ、そうやって〈違法です。〉の巻紙広げていれば、国民みんながあんたが出ている刑事ドラマやヤクザ映画のDVDを買うと思っているんじゃないの。

い〜や、〈それ、ないです。〉とおれは思うと言わせてもらうね。だってあなたは松田優作じゃないんだもの。松重豊の『孤独のグルメ』だって、DVDを買ったりレンタルしてまで見るやつの気が知れないとおれは思うが、あなたなんて本当に顔がイカツいだけでしょう。刑事ドラマは毎日作られ全部似たり寄ったりでしょう。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之