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ヤマト航海日誌

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2015.9.27 主人公はインターバルタイマーの人



〈十九歳の男〉と言えば『究極超人あ〜る』に出てくるなんとかいう先輩である。基本は〈トライX〉だ、いやいや〈ネオパンSS〉だ、〈D-76〉は二倍希釈の使い捨て、いーえ絶対に継ぎ足しの方が……とか言ったりするんだよな、よく覚えてないが。お前が池に落としたのはこの〈ハッセルブラッド〉か、それともこちらの〈ローライ〉か? いえいえ〈α-7000〉です。でなけりゃ〈T90〉でも……。

かつてアニメのメカと言えば、松本零士が〈シュタインハイル〉の照準器やタンク博士の〈Ta152〉を手本に描いたようなものだった。それが大河原デザインの〈勇者マクサム〉か〈闘将ダイナックス〉な〈RX-78〉となり、ルイジ・コラーニを真似たような〈98式AV〉に結実する。その後はただやたらと線が多いだけである。

だが〈F3〉や〈F-1〉がなんだ! あの時代にすげえ高くていちばんカッコよかったのはおれに言わせりゃ〈LX〉だ! いやまあ〈OM-4白チタン〉には負けていたかもしれないけど、でもあんなの男が持って歩けるか……って、おれは一体なんの話をしてるのだろうか。おれのタンクも引伸機も棚の上に置いたまま、ずっと降ろしてないしなあ。もう今更〈LX〉でもないけどなあ。いま目の前に『あ〜る』の博士が現れて、「こっちの最新デジタルか、それとも〈LX〉か」と言われたら、「LX」とおれは答えるだろうけどさ。

『うしおととら』の連載中におれが〈少年サンデー〉を毎号買って読んでた話は前に書いたが、お気づきだろうか。それはつまり、ゆうきまさみのマンガ版『パトレイバー』も毎回読んでたということだ。ただ、一応そうなんだけど、何しろおれは『うしおととら』を、その前には『青空しょって』というゴルフのマンガを読むために〈サンデー〉買っていたものだから、『パトレイバー』の印象は薄い。『あ〜る』の方が変に細かいところだけなぜか記憶にあったりする。「インターバルタイマーが必要だ」とか言ったりして……。

はたち過ぎてロボットもののマンガなんかバカらしくて読めるかっての……おれは二十五歳のときに〈サンデー〉を読むこと自体やめてしまって、『うしおととら』だけ単行本で後から読んでいるのだが、『パトレイバー』は最後までそれでも読むだけは読んでいる。内容はろくに覚えてないが。

しかし『うしおととら』と逆に最初はかなり期待できるとも思ったのか。さてここではゆうきまさみのマンガ版だけに限った話をさせていただくが、あの連載が始まったときにおれは十九歳だった。ロボットが街で暴れて警察ロボがそれをとっちめてたのしめたのは最初のほんのちょっとだけで、あの連載はその後ダラダラダラダラしてくる。なんだかわけのわからない陰謀企業の内幕話がメインになって、主人公が話にまるで絡まなくなってしまうんだよな。まあ、ロボットマンガなんかをほんとにリアルにやろうとしたら、そうなってしまうものかもしれん。

そう言えば「まのちゃん見てるか」なんていうのも覚えてるけれど、あっちの先生の〈なんとか4〉の陰謀とかいう話もようわからんかったな。やっぱり〈F-8〉や〈F-5E〉飛ばしてるくらいのところがいちばんおもしろかったのに。〈F2〉もモードラ付きで出てくるし……。

いや、ええと、とにかく『ロボパト』の主人公だ。あの泉野明ってのは、主役としてまるきりキャラがなってなかったんちゃうか。「ロボットが好き」というただそれだけの女で、三半規管が丈夫か何かであの〈ガンキヤノンT型ロボ〉を酔わずに操縦することができると。他になんにも取り柄がなくて、出現したライバルにゲームのシュミレーターで敗けて「シロートだな」と言われちゃう……。

まあ、そこまではいいとしようや。でもその後の展開はなんだい。「二度とヘナチョコと言わせるか」とかなんとか言って操縦訓練に励むんだった。『訓練て何やるのかな』と思って読むとロボット同士のロボ柔道で、ドターンと投げて「一本」とかいう……。

うーん、とここでおれは悩んだものである。このマンガをおもしろいと思わなければいかんのか、と――。

いや、まあ、いいだろ。ロボ柔道も。一回だけならいいアイデアと言えましょうや。けれどもあの永遠0子はその後ひたすらひたすらに、たまに出てきてロボ柔道やり続けるだけなんだから。キミは〈インターバルタイマーの人〉か? 腕をみがいていればいいってもんじゃないだろう。主人公としての自覚がまるであるように思えない。
 
主人公なら主人公らしく、恋人未満のコンビ役との関係はどうなるのかと思わせたり、組織の矛盾や己の使命に悩んだり、「それ以前にあなたにはロボットに乗る資格がないのよ」と人に言われて傷ついたり、過(あやま)ちから人を死なせて自分もまた死の恐怖に捕らえられ、一度はまったく操縦ができなくなるくらいのことしてください。グダグダした物語をキミがなんとかせんでどうする。

マンガ版『パトレイバー』。あれはそう言いたくなる連載だった。〈グリコなんとか事件〉みたいな迷走した話がえんえん続いた末、何がなんだかわからんままに〈ガンキヤノンTイングラム〉がライバルロボを「えい」と投げておしまいになったんではなかったかな。特に後半、まるで記憶にないんだけど。

マンガ版の泉野明……あれはロボットに乗ることと、操縦技倆をみがくこと、それ以外は一切なんの関心もないキャラだった。高校の光画部員が〈F4S〉に黄色いストラップを着けてプロ気取りでいるところに、ライバルしもまる子ちゃんのHSグリップ付きに完敗して、「あれに勝つならむしろこいつ」と〈F-601〉を見せられて、「《苦悪痛泥屠(くおつでいと)》って書いてるのヤだーっ!」と叫ぶくらいが最大の苦境という、そんなような女だった。

いえね。まあ、いいんですよ。これがほんとに高校部活マンガなら、主人公が百人一首の早取りしか興味がない女でも、青空背負って「塩ラーメン」と叫ぶような男でも、別にいいと思うんですよ。でも警察組織なんてもんを舞台にして……いやまあ、確かに警察機動隊って、毎日毎日柔道ばかりやってる人とか、ブラスバンドの腕をみがいているだけみたいな人もいるって話も聞くけど、しかし現実がそうだからって、ロボ柔道でそれをなぞることはないんじゃないですかね。

うん。篠原遊馬なんか、ドラマを盛り上げるために死んでよかったんだよな。そういうふうに作らなくちゃいけませんよ。どうしようもない能書きたれが少しは成長したところでズバッと殺る。これです。これができなきゃダメです。しかしまるきりできないまんま『ヤマト2199』なんか作って泉まんまの山本を〈コスモドラケン〉に乗せるでしょう。R・田中一郎みたいな髪して風間真子のつもりの女を。

腕が良ければいいってもんじゃねえつーのよ。そもそもただ設定で『腕がいい』となってるだけで、具体的にどういいかまるでわかりやしねえじゃねえか。キミ達は職業婦人になんかならんでいいから、家に入って料理の腕でもみがいていなさい。

ああよかった。まあどうにか『ヤマト』の話で終わらせられたぞ。またまったく関係のない話になるところだった。



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之