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ヤマト航海日誌

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としたら伊東と新見が正しく、道を誤っているのは島と真田の方で、沖田が狂人であるがゆえに反乱をせねばならなかったことになる。沖田を殺して古代を置き去りにするのも正当ということになるけど、しかし、なんでそんなことが?

うーん……ひょっとして、ニューギニア島スタンレー大山脈の下に全長二千キロの超々巨大宇宙船でも既に建造してあって、ウン十億人をコールドスリープさせて一億年かけてビーメラ星まで行くとか、そういう計画なのか。おれにはそのくらいしか方法が思いつかないけれど、だったら〈ヤマト〉の帰りなんか待たずに出発した方がいい気がするけどどうなんですか。

何しろこのマンガ版では人類社会は既に逼迫した状況にあり、『あと一年』どころかすぐにも滅亡してしまいそうなのだ。国連本部の偉い人が、


「各ブロックは寸断され/エネルギーも物資もおぼつきません/敵性植物の有毒胞子と土壌改変は生存域を脅かし/モスクワが繰り返す「サヨナラ」の打電にも我々はなす術がありませんでした」


なんてなことを言ったりする。

ダメじゃん。ってゆーか、そういうことなら、〈ヤマト〉が帰って放射能、いや敵性植物の駆除ができても365日目に全人類が餓えて死ぬじゃん。

〈エネルギーと物資が尽きる〉はダメなんだよ。〈ヤマト計画〉の意味がなくなるダメ設定なんだよ。西暦2200年に人が食う物がないのは一緒だ。そうだろ。そこに気づけ。

致命的な欠陥のある〈ヤマト計画〉は破棄してすぐに〈イズモ計画〉で行きなさい。島と真田にちゃんとそうハッキリ教えてあげなさい。わからないなら船から放り出しなさい。〈イズモ計画〉ならばみんなを救えるんだろ。そういう設定なんだろ、ええ? 何をどう読んでもそうとしか思えんし、でないと森雪先生は子供に嘘を教えていることになるぞ。

「ちゃんと本当」から考えたならそんな疑問が湧くはずだけど、子供達は馬鹿揃いで不安は感じてないらしく、「宇宙人はなんでそんなことするの?」とユキ先生に聞くだけである。ユキの答は、


「大昔に私達がしたような/弱い国から自分の国に富と物資をもたらす植民地を造る気なのかもしれないわね」


だって。いや、それだったら、地球人類を殺しちゃなんにもならないでしょう。青い星を赤くしたら水産資源も得られんでしょう。「物資がない」と言っときながら「物資をもたらす」ってなんだよお前。『どうせなんにもわからんだろう』という考えで子供にいいかげんなことを教えるのはどうかやめていただきたい。



   *



――とまあ、〈ヤマト〉発進(おっと、『発進』と言ってはいけないんだったか。『抜錨』ね、バツビョー)までのコミカライズを読んで考えたわけだけど、例によってここまでは話のマクラでここから本題である。ちゃんと本当から考えろ。いいかげんな口から出まかせでその場を言い逃れようとする人間を許すな。というのが今回このログでおれの言いたいことなのだ。


「どうして兄を連れ帰ってくれなかったんですか」


なんとなんとおれの『敵中』、投稿開始から五年半も経ち、文庫本なら二千ページも書いたかという今になってここでようやく、おれの古代がこのセリフを沖田にぶつける場面とあいなりました。〈ハーメルン〉での今日の更新を読んだ方はおそらくみんな、「ええっ、まさか、それをここに持ってくるのか?」と思ったことでしょう。

って、思ってねえかな。だったら君、なんで今こんなものを読んでんの? もちろん、『ヤマト』なんだから、やりますよ、それは。『ヤマト』をリメイクしておいてそれをやらない『2199』は『ヤマト』のリメイクとは言えない。古代と沖田のドラマのない『ヤマト』は『ヤマト』じゃないんだから、『2199』は『ヤマト』じゃない。あれはたんなる〈原作レイプ〉――それがわかっているんだからやります。

おれはおれの古代進をむらかわみちおのコミカライズ版のように、「兄の遺志は自分が受け継ぎます/でもそれだけでなくあなたという人を見るために乗艦をさせていただきます」なんて言うつまらん優等生にはしません。

だいたい、『兄の遺志』と言うが、むらかわみちおの古代守はどんな志を持ってたちゅーのや。〈ヤマト〉の戦術長になること? いや、違うよな。沖田はそのはずだったことを守に秘匿してたんだから。

知らないことは志にしようがない。守が〈メ号作戦〉を陽動だと思っていたなら〈ヤマト〉の戦術長になるのを知ってたことも有り得ない。守だけが陽動と知ってたことにもまたできない。『戦術長として〈ヤマト〉に乗る』というのは『兄の遺志を受け継ぐ』ことになりません。

まいっちんぐユキ子先生と同じくこの古代進は〈ああ言えば上祐〉で、事実を捻じ曲げ自分の都合のいいように話を作り変えてしまう。臆病者であるために〈心の装甲〉で身を護るのだ。人に何か言われたらすぐ〈攻撃〉と受け取って、ケンカ腰の対応を返す。主張はいかにも正論らしく聞こえるが、相手の言葉に対する答になっていないしすべてが一枚の葉っぱ。

そういう人間だということだ。古代やユキに限らずどいつもがそうなのだ。前にも書いたがこのマンガ版では加藤も加藤で、アニメ版の「一応命令は聞きますよ。上官ですからね」のセリフが、


「お兄さんを先の会戦で亡くされたことは聞きました/ですが私怨で軍事を遂行することは首肯できません」


なんてなもんに変えられている。つまらない男。

だからそうじゃねえだろう。そういう話じゃなかったろう。古代がお前の〈ゼロ〉を盗んで壊したのはたんに『触るな』と言われたら触る人間だったからだよ。で、都合の悪いことは、自分の中で合理化して忘れちまう人間なんだよ。

そんな人間に調子を合わすな。ここはお前、言うんだったら、


「オレはテメエみてえなやつを上官とは認めねえ! だから命令は一切聞かねえ! 文句があるなら放り出せ! ただしオレの部下もみんなオレと一緒に降りるけどな!」


でなきゃいかんだろう。それでこそぼくらの加藤三郎だろう。首肯? なんだシュコウって。そんな〈心の装甲〉で身を護ろうとするんじゃない。

臆病者め。そんなもんは葉っぱだ、葉っぱ。昭和の帝国軍人は私情で軍事を遂行するのは首肯できないと言いながら、私情で軍事を遂行した。むらかわみちおのキャラクターは当時とまったく変わっていない。平成という時代はあの山上たつひこのマンガの中から抜け出たようなブサイク男が《平成》と書かれた紙を持ってる図とともに記憶される。それが天皇制であり、小林よしのりなんかの眼にはあれが美しい光景と映る。

昭和裕仁は箱入りおぼっちゃま君だった。「重慶まで行けぬのか。行けぬのならばどうすればいいか」と誰彼構わず呼びつけて言えば、『陛下のゴシンネン格別だから』というので第二のゲルニカが始まる。それをまったく悪いと思わず、次に「ポートモレスビーまで行けぬのか。行けぬのならばどうすればいいか」。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之