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ヤマト航海日誌

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「今更なんだ! 出航したとき、『必ず遊星を止めるのだ。それを遂げずには帰らぬ覚悟で』とかなんとか言っていたのはあんただろうが!」

「えー、言ったかなそんなこと」

「言ったんだよ。あんたがそう言ったから我々はみな死ぬつもりでここに来たという話じゃないのか。どうなんだよ。それをなんだ、急にいきなり『実はこれは陽動だ』などと……」


と、何をどう考えてもこんな話になるんじゃないか? 皆さん、おれはおかしなことを言ってますかね。どうですか。『陽動だ』と行く者達に知らせないのは、愚かの限度を超えた方策と言うしかないのではないか。

どうしてこうなるかと言えば『古代守はたとえ囮と知っていても行っただろう』というのがカッコいい、沖田に向かって『あなたの盾で死ねるのならば本望です』と言うのがカッコいい、と出渕裕が考えて、それに「ウンウンその通り」と頷く者がいるからである。もちろん、どちらの頭も決して〈思考〉という働きなんかしていない。何も考えてないからそんな幼稚なことが思えるだけだ。

大体、そもそも妙だろう。『古代守はたとえ囮と知っていても行っただろう』と言うのはつまり、『他の98の艦長は行かなかった』と言うことなのか。基地を叩く作戦ならば行くけど陽動作戦なら行かない。だから嘘をつくしかなかった、と。

いやいや、他の者もみんな、たとえ敗けるとわかっている戦いでも行ったんじゃないの? どうしても、『そんな男は古代守ただひとりだけ。だから〈ゆきかぜ〉は三倍の速度で飛んでガミラス戦艦五隻を軽く沈められる。だから沖田の盾になれるが他の98人はダメ』と出渕裕はしたいしブチ・ファンもそれを喜ぶのだろうが、そんなもん、何から何までデタラメと思う人間が普通だろうが。だから『2199』は、DVDがタッタの五十万枚しか売れなかったしキムタク主演版も、おれ同様に誰もがここで『ダメ』と言うしかなかったんじゃねえのか。

だから何度も言うように、『陽動』はもちろんだけど『沖田さん、あなたの盾で死ねるのならば本望です』というのはダメなの。古代守の最期の言葉は、『ここで逃げたら死んだ仲間に申し訳が立たない』でないと絶対にダメ。

『メ号作戦は陽動』というのはまったくのナンセンスだが、しかし沖田が麻原彰晃そのものだからとすればどうしてこんな歪んだ考えを持つかの理由に説明がつく。おそらく、〈ぶっちゃん沖田〉は艦隊の全艦長にひとりずつ、個別に話しているのじゃないか。


「実は君にだけ教えるが、この作戦は陽動なのだ」

「えっ、どういうことですか」

「それはかくかくしかじかだ。しかし他の艦長には決して言わないでくれたまえ。君以外は誰ひとり、陽動と知れば行かない腰抜けだからな。それを君にだけ話すのは、わしが君と君の部下だけ漢(おとこ)と見込んでいるからなのだ。行ってくれるか、たとえこれが陽動と知っても」

「そ、それほどまでにわたしを……はい。行きます。行かせてください!」


これを古代守を含めた99人全員にやった。みんながみんな自分だけ沖田に特別扱いされてると信じるがゆえにほどほどにやればいいはずの戦いに死ぬ気で向かっていったのだ。おまけに薬が効き過ぎちゃって、古代守が「あなたの盾で死ねるのならば本望です」と叫んで部下と歌いながら敵に突っ込んでいってしまった……。

地下鉄サリン事件もこうして起きたように。こう考えれば『メ号作戦は陽動』というイカレた話のすべてに一応の説明がつくことになるが、しかしやっぱりわからんなあ。こんな意味のないことやるのになんの意味があるんだろう。

まあ、麻原がこんな男で、上祐にしろ誰にしろオウム信者はどいつもこいつもこんな手にコロリとかかるやつらだったと言うことだけど。で、古代進と島だ。〈ぶっちゃん沖田〉はやはり麻原彰晃流でこのふたりを操縦する。

艦橋で古代が「てーっ!」と叫んでも作業は南部がしてるわけだし、〈コスモゼロ〉は実はカミカゼ特攻機で古代にせよ山本にせよふたりの兄同様にイザと言うとき「盾になって死ねるのならば本望です」と笑って敵に突っ込むことを沖田に期待されている。だからこそ機体を盗んで勝手に飛び出し、無鉄砲な行動の挙句に壊して「うえ〜ん、酸素がもたない〜」となるこのふたりを特別に扱い、寵愛をかけてやっているのだ。沖田が古代と山本を見る眼は、牧場主が肉牛を見る眼以外のなんでもない。

麻原が上祐を見た眼以外のなんでもない。ある意味物凄くかわいいことはかわいいのだが、それだけで、古代と山本は捨て駒なのだ。

沖田にとって別にかわいいわけではないが大事なのは島大介だ。日程に遅れを出さずに地球に帰還できるかは誰より島にかかってるのだから当然だ。

〈ぶっちゃん島〉が麻原流で沖田に操縦されているのも一目瞭然のことである。オリジナルの島も「日程、日程」と言う男ではあったけれども〈航海班長〉なんだからそれ自体は当然のこと。見ていて『なんで』と思うところは特に見受けられなかった。

しかし、『2199』だ。第5話で、艦長室に沖田を訪ねて何を言うのかと思えば別に言うことに意味があると思えぬことをグダグダと口にする。ここで見ていて『おや』と思う。こいつ、『人類を救うため』じゃなく『沖田に認められるため』に日程を守ろうとしていねえか?

これはどう見てもそうであり、その後も話のいたるところで古代にライバル意識をむき出し、その一方で太田に対して「お前はおれの下だ、それを忘れるな」という態度を見せる。オリジナルの島は決してこんなキャラではなかったのに。

やはり出渕裕によって、オウムのナンバー4にしてサリンを作れる唯一の人材、ゆえに松本智津夫にとって実は最も重要だった土谷正美そっくりに変えられてしまっているのだ。〈ぶっちゃん島〉こそ〈ぶっちゃんヤマト〉のエースの四番だったのである。

ゆえにものすげーヒネクレもん。野比のび太はしずちゃんでなくジャイ子と結婚するのが本当のはずだった。『2199』の古代も島も元を正せば〈副戦術長〉に〈副航海長〉であったのが、本来の〈3〉と〈4〉が死んだため繰り上がった人員とされる。南部と太田が〈5〉と〈6〉で、古代が〈13〉、島が〈14〉が本当なのに。

なのにこうすりゃ、そりゃ話がおかしくもなるってもんよな。てわけで、おれの『敵中』でも、真田が副長なのに古代が艦長代理ってのはまさかないよな、おかしいだろうと思われる方は、〈ハーメルン〉の明日の更新を読んでください。


(付記:おれがオウムの村井秀夫を見て『うわっ、真田だ。「2199」の真田』と思ったのはこのログを書く数ヵ月前。ここに書いたテレビ番組を見たときである。『エロマンガ島のミミズ男』の回にも村井の名を出してはいるが、そのときは本から名前だけ拾いながら『村井秀夫、え、オウムのナンバー2? そんなのいたか? ええとどんな顔だったっけ』などと思いつつ書いていた。と思う。その後すぐに忘れてしまっていたため記憶が定かでない)



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之