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ヤマト航海日誌

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2019.2.3 レギオネルかの子が喜べばそれでいい



『2202』についておれは以前、これは田舎のOL・桂木透子が〈実話〉としてネットに出した『愛宙(あいぞら)』とでも言う妄想の産物小説をまんまアニメ化したものじゃないかと書いた。そう考えながらに見るとイカレた話のすべてに納得いく気がすると。

でもその後で、ちょっと考えが変わってきた。これは『ラジヲの時間』じゃないのか――そう思うようになってきた。桂木透子の『愛宙』を元に『2199』の続編を作ることにはなったけれども、スポンサーであるバンダイがそこで、


「おいおい、これには、メカが全然出ないじゃないか。メカが出なけりゃプラモを作って売れんじゃないか」


と言って、福井晴敏に、


「こういう次第なんです先生。この話にメカを足してくれませんか。あなたしかできません」

「まあな」


と言って、注文はメカだけなのに、


「古代、覚悟はできましたか」

「ぼくはやってない! ぼくは無実だ! ぼくは、ハメられたんだ、テレザート星のテレサに! 『2199』のスターシャも変な女に変えられていたけど、今度のテレサはもっとわけのわからない女になってる!」


なんて調子でひとりがベラベラ長いセリフをしゃべり続ける場面をたくさんたくさん足した。で、小林誠ってのがさらにその場の思いつきで話をグチャグチャにしていって、福井がそのたび、


「ひとつだけ手がある! 星を吹き飛ばすんだ!」だとか「ロケットにまたがらすんだ!」


とか言って、監督の羽原信義とやらが振り回されている。けれども西崎彰司は平然として、


「ボクはねえ、レギオネルかの子が喜んでくれればそれでいいんです」


♪レギオネルかの子が〜、あのアバズレが〜、ボクを見つめて歌口ずさんでいる〜、それだけでボクは満足だ〜。でもレギオネルかの子って誰?って感じの。

『ヤマト2202』って、そういう制作体制なんじゃねえのか? おれが見ていてそう思うのだが、レギオネルかの子とは誰かと言えば皆さん、おれが前回ここに〈村井秀夫〉と書いているのを読んで『誰?』と思ったことでしょう。そんなやつ知らないぞ、と。

うん。いやおれも、しばらく前にテレビでオウム事件関係の番組を見て、『村井秀夫? そんなんいたっけ。え、教団のナンバー2? ハテ、とんと覚えがないなあ』と思ったんだけど、とんでもない。村井は常に麻原の傍に寄り添い教団の闇の部分を統括していた鵺(ぬえ)のような存在だったと言う話じゃありませんか。でも鵺だから、やっぱり覚えてられないけども。

オウム真理教の麻原に次ぐナンバー2は村井秀夫で上祐史浩はナンバー3。でも上祐に聞こえるところでそう言うと、地下鉄サリン事件から四半世紀になる今もまだ、上祐のやつが「違う!」と叫んで駆け寄ってきて、


「違う! それは違います。オウムのナンバー2はボクです。ボクは言わば〈戦闘班長〉。村井さんはまあせいぜい〈工場長〉と言うところで、決してほんとに重要な幹部なんかじゃなかったんです。あの教団で誰より尊師の寵愛を受けていたのはボクです。断じて村井じゃない。だからボクがナンバー2だ。ボクの方が上だったんだ――っ!」


そうまくしたてて止まらずに、その後数日機嫌が悪くて誰彼構わず怒鳴りつけるので〈ひかりの輪〉では、「決して村井の名前を出すな。間違ってもあっちの方が上だと言うな」というのが皆が蔭でヒソヒソと言い合う言葉になっているとかいないとか。いや、もちろんおれがいま作った話なんだけれども、


「だからそれが松本智津夫という男の人間操縦術であったわけでしょう。幹部のうち〈古代〉と〈島〉を張り合わすため、その下にいる〈南部〉と〈太田〉をむしろ目にかけているようにふるまう。で、愛人の石井、つまり〈森雪〉ですな、この女を利用して、「尊師が教団の誰より本当に見込んでいるのはアナタよ」なんて皆に吹き込ませる。そのようにして教祖の〈愛〉を得るためならどんなことでもやる人間を作り出していったのであり、あなたもうまく乗せられていた。しかし真のダースベイダーは村井であり……」

「NO――っ! ボクこそが〈尊師の子〉だーっ!!」


上祐が今もそんな調子というのはやはり本当のことだと言う。

上祐は『自分が〈戦術長〉だから〈教祖代理〉』とうぬぼれていたが、〈副長兼技師長〉なのは村井だった。〈戦術〉だって本当にやるのは〈南部〉と〈新見〉の仕事であり、上祐には絶対にほんとに大事なことはさせない。麻原にとって上祐は〈ナンバー2〉や〈3〉どころか、ほんとは99番目くらいで、人目につくとこに置いとくための喋るマネキン人形に過ぎない。お飾りのタレント声優なのだから、テレビ出演や選挙運動、外国旅行といった際での〈エスコート(随伴)役〉はさせても弁護士一家殺害だとかサリン散布とかいった戦闘任務はあてがわない。

上祐は『2199』の古代守だ。教団の闇の部分から人目を反らす陽動作戦の囮と知らない哀れな存在……。

てなわけで話は前回の続きである。出渕裕は『2199』で、沖田を麻原そっくりの男に作り変えたと書いた。自分を信じてついてくる者を騙して捨て駒にしながら、〈ヤマト〉のクルーには「信じるのだ」「信じるのだ」と連発する男に、と。

〈メ号作戦〉は陽動だが、古代守はそれを知らされてなかったことになっている。なってはいるがどうもおかしい。話がそもそも変な上にてんで矛盾だらけじゃないか。

『知らされてなかった』と言う割には、沖田から「多くの犠牲を払ったが作戦は成功したのだ。ここは退くんだ」と言われて「あ」という顔をする。『そうだ、これは陽動だった』と完全に知っているツラだ。であるからこそに「盾になって〈きりしま〉撤退を援護します」とすぐ言うことができるのだ。

あれはそうとしか見えない。真田はのちに「たとえ囮だと知っていてもあいつは行っただろう」と言う。だったらそう教えてやれば守にしても守の部下も納得して死ねもしようが、いきなり「実は陽動だった」で気持ちを切り替えられるだなんてことがあるか? そんなこと、あるわけねーだろ。どう考えたって。

大体がただでさえ千に対して百隻で、こちらはワンショットライターと知りつつ向かって行く作戦なのだ。これで沖田が提督ならば必ず敵の基地を叩けるとどうして信じられるだろう。

それに比べたら艦隊の誰もが、『これは陽動なのだから、陽動さえ済んだらそこで撤退できる』と知ってた方がいいじゃんか。ねえ、皆さん、そう思いませんか。おれは何かおかしなことを言ってますかね。

なのに『これは陽動だ』と知らせず戦いに向かわせたら、みんながみんな「オレはここで死ぬ! 敵と刺し違えて死ぬのだ! みんな共に死のう!」「おーっ!」となるに決まってんじゃん。たとえサーシャが無事に火星に到達し、そのとき艦隊の大半が生存していたとしても、


「撤退ですって? 何を言うのです。ここまで来て基地を討たずに退くなど気持ちがおさまりません。行きましょう、提督!」


とみんなが言ってしまって、これに沖田が「いや、相手が千隻で、こっちが百隻なんだから無理……」と言っても、

作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之