小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ヤマト航海日誌

INDEX|126ページ/201ページ|

次のページ前のページ
 

さて原子炉に飛行機が墜ちて大惨事、と言えばもうひとつ『天空の蜂』ってえのが、やっぱりまるで『サンダーバード』みたいだったが、あれもつまらなかったよな。しばらく前にケーブルTVで放映したのを録画して、最後の方はやっぱり飛ばして見たんだけどさ。

ヘリコプターに爆弾仕掛けた犯人グループの仲間割れ話がもう本当にどうでもよくって、高速増殖炉が危険だというんなら溶隔塩増殖炉とかいうのにすればええのんちゃうのかという気に見ていてなってくる。無人ヘリもそれで飛ばせば十年でも浮いていられてこのテロも成立せんだろうし、たとえ墜ちても二、三年で……いや、そういう問題ではないかもしれんが、でもそういう問題じゃないのか。さすがにヘリや飛行機を原子力で飛ばすってのは言語道断であるとしても……。

とにかく、『シン・ゴジラ』と『天空の蜂』。どっちもどっちのサンダーバー道映画であるが、比べてみてどちらがマシか。

これは難しい問題だ。『天空の蜂』は普通のマトモな映画っぽい顔をして、東野圭吾原作らしく可もなく不可もない造りだけに難しい。でもこれならばおれの眼で見て『新幹線大爆破』の方がまだしも良かったと言うしかないなあ。似たようなもんだけどもさあ。

『新幹線大爆破』なら直せば『スピード』になるけど、『天空の蜂』の方ときたら、原発にヘリが墜ちるかどうかっていう話なのにあまりにすべての要素が地味で、ケレン味というものがなく、江口洋介がひとりでわめきまくっていて、最後に空に向かって手を挙げ「うおお」と叫びたてるだけ。

江口洋介はただただずっと、口をパクパクの手を振り振り、首をガクガクの人形みたいな動きしかせず、下半身は動かなかった。お前、主人公なのに、とうとうまったくなんの仕事もしなかったじゃん、この映画に必要のない役だったじゃん、要らんから死んでいいよ、という気に見ていて君はなりませんでしたか。おれはなったね。何をどうすりゃ『スピード』にできるかわからん。

そこへ行くと、『シン・ゴジラ』。これはまだしもサンダーバー道の極意を極めてるんだよね。そんなものを極めたところでしょうがないという極意を極めきっている。映画館に行かないでテレビで特撮場面だけを見るおれからするとこっちが上ということになってしまいそうだが……。

しかしいくらなんでもそれは……せめて出てくる女がなあ。女がマシなら『天空の蜂』が一応は上と言えるのに。そこがダメなんだ。東野だから。『シン・ゴジラ』の石原さとみも〈窓ぎわのトットちゃん〉のごときKYだけど、『天空の蜂』の仲間由紀恵も出てきた途端に「あ、これはダメ」とわかるでしょう。よくもまあ陰気な女を陰陰滅滅と演じたもんだ。〈劇団のサダコちゃん〉かよ、キミは。

江口洋介の妻役もまた、夫に向かって「アンタ、主人公なのに全然なんにもしてないじゃない! なんにもよ! ただのひとつも主役らしいことしていない!」とひたすらになじる女で、よくもこいつら、離婚しないでずっとやってきたもんだよな、と。『結婚するならどっちがマシか』と聞かれたとしても、「絶対にどっちもイヤ」と応えるしかないじゃないすか。

そうは思いませんでしたか、皆さん。おれは思った。この辺がいかにも東野圭吾と言うか、やっぱりこの原作を書いた頃には売れていなくて妻になじられていたのであろうか。そりゃ売れないよこんな『サンダーバード』なのになんのケレン味もない話なんか。ねえ。『下妻物語』なら、出てくる女が女ですからカネ出して買ってやる気にもなってくるけど、東野圭吾……よく今では売れるようになったよな。

おれなんか、たまに読んでも途中で投げ出してばかりいる。いや、もちろん買いませんよ。買いはしないが、しかしやっぱり東野圭吾も、よく図書館にあるんだよね。〈ご自由にお持ちください〉のコーナーに《除籍図書》のシールを貼られて、五年前に何冊も購い入れたうち一冊が今では誰にも見向きもされず置かれていて。

おれはもう十五冊はいただいたかな。でも最後まで読み通したのはほとんどない。こないだは『マスカレード・ホテル』ってのをもらって読んで途中で投げた。その前の『超・殺人事件』ってのはなかなかおもしろかった。

ええと、いや、こんな話をしたいんじゃねえよ。『シン・ゴジラ』は『サンダーバード』のパクリだっていう話なんだよ。まるで映研の学生が自主制作で撮ったような。おれが昔にタラララランな恵比寿の都写美で〈映像展示作品〉として『サンダーバード』第一話をたまたま見ておもしろかった。そういう話をしていたんだよ。

で、その同じところでおれが、美大の学生が卒業制作で作ったとかいうアニメを見たという話を前にしたけれど、伊藤計劃が夢に見た『ゴジラ』の話もそのときしただろ。なんでも今度は『ゴジラ』をアニメ映画でやるとかで、『シン・ゴジラ』の地上波放映の最後に付いてた宣伝で見たけど、ひょっとして、あの〈アニゴジ〉ってそれじゃねえのか。

伊藤計劃が見た夢の『ゴジラ』の話が元ネタのアニメ? 『うーん、まさか』とも思うんだけど、どうなんでしょう。どっちにしても、作るのが出渕裕やその同類じゃダメだっていう話でもあるけど。

ねえ。宣伝をちょっと見ただけで『エヴァンゲリオン』第十九話『男の戦い』の劣化コピーというのがわかる。なんだか戦闘メカの中で、男が「うおお」と叫んでる。

ダメだ、それじゃあ。『天空の蜂』の江口と同じだ。「うおお」と叫べばメカの性能が三倍四倍になるんだという――それを当然と思うようじゃあ。どうして今の日本人に話を作らすとそういうもんになっちゃうのだか。

だからその〈アニゴジ〉ってのも、ひとめでわかるよ。水爆でも死なないゴジラに向かって主人公が「うおお」と叫ぶと緑色の〈コスモ零式〉がトマトのように赤く変わってツノが生え、萌え美少女が言うんだろ。「すべての性能が三倍よ! いいえ、百倍、億倍よ! ああ、これならゴジラを倒せる!」


「うおおっ! うおおっ! うおおっ!」

「ああ! これぞ日本男児! そうよ、これこそ日本の男よ! 日本人は精神力でどんな限界も超えるものと昭和の昔から決まってるのよ! 今のアナタは本当に素敵!」

「うおおっ! うおおっ!! うおおぉーっ!!!」

「これは、男の三つの要素が、アナタに力を与えているのね! 男はイザというときにやらなければならない! 今がイザというときである! そしてフクツ君、アナタは、アナタは男なのよ! 逆境がアナタを炎の男にしたのね!」

「うおおっ!!!! うおおっ!!!!! うおおおおおおおおうっ!!!!!!!!!」


で、ドドーン――と、そのようにしてゴジラを倒す。そういうアニメなんだというのが、宣伝をちょっと見ただけでわかる。

『天空の蜂』の江口と同じだ。安易・無思考・出渕裕。セカイの中心で「うおお」と叫べば万事解決の骨なし映画。後は歌おう、ふたりのために〜、セーカイはあるのォォォ〜。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之