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ヤマト航海日誌

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深夜アニメやラノベはみんなそういう構造になっている。現実社会がクソゲーで、アニメやラノベが正しいのなら、君は〈ミスター○っ子〉になれる。そう信じているんだろう。

だから何を盗んでもいい。女の子のハートを盗めば女の子は君のものだ。ヴァイオリンの銘器を盗めば演奏技術も君のものだ。それを手にした瞬間に、君はなんの努力もなしに、〈神の腕を持つヴァイオリニスト〉になれるのだ。

そして他人の小説もそうだ。コピペして〈自分が書いた〉としてしまい、うまくいったらその書き手の文才までも君のもの。いやいや、ほんとは自分には、自分で気づいてなかっただけですごい文章、すごい物語を書く才能がもともと備わっていたのである。だからコピペは盗みではない。むしろ元々この小説は、オレが書くべきものだったのだ。ほんとはオレの頭の中にあったのをどうにかして島田が盗んでいやがったのだ。

なんて野郎だ。やはり人間のクズだった。それを取り返すのだから、オレが正義で島田が悪だ。ほんとはオレが書いたものをオレが書いたと言って何が悪いんだ。

そうとも、きっと〈文(ぶん)皇様〉がどこかにいて、その通りだと言ってくれるに違いない。今日からオレは〈ミスター文(ふみ)っ子〉になれるんだ。

そんな空想をしたことが一度もないとは言わせない。人は誰でもそういうものだ。もちろん、おれもまたそうだ。テレビで〈ストラディバリウス〉を見れば何がなんだかわからなくてもついそんな夢想にかられる。夜道を歩いて若い女を見かければ、監禁したらひょっとしておれを好きになってくれるかも、なんてことを考える。

だが、ほんのちょっとだけだ。ちょっと考えるだけならば別に構わないことなのだ。本気で考え計画を練り、バレたときに正当化する理屈をこねたりしない限り、恥じる必要すらもない。

〈○皇様〉が現れて、必ずおれを〈ミスター○っ子〉と認めてくれるなんてこと考えぬ限り恥ではない。

福井晴敏は十二年前にホセ・メンドーサだった。けれども今はせいぜい〈ウルフ金串〉ってとこだな。『ローズダスト』の結末をうまくまとめることができずに、ドカドカ無意味な市街戦でごまかしたときに、あの作家はたぶんダメになっていたんだ。今の落ちぶれぶりときたらもう見られたもんじゃないよな。とうとう『ヤマト』に手を出すようになっちまうとは。

古代を〈ミスター渕っ子〉として描くようになっちまうとは。そのうち、きっとおれみたいに、誰にも相手にされなくなるぞ。

今この二月や三月にこれを読んでいる君は、誰にも教えずひとりでコッソリこれを読んでいるんだろう。そして頼むからもうこれ以上これを読むのが増えてくれるなと願ってる。そういうやつがどうやら今、二十人ばかりいるらしい。

君はもちろん間違ってもおれにコメントなんかしない。おれに意見しやがったウツボの干物を見ているもんな。あのウツボは、無論おれには削除することができるんだが、しない。あんなのない方が、少しは開いて読む人間が増えそうなのもわかってるんだが。

けど、まさかだよ。とんでもない。おれは一見(いちげん)の客なんか、むしろ断りたいんだから。だから〈一見除け〉として、あの外道を干物にして暖簾(のれん)代わりに吊るしてるのさ。ちょっと前にも書いたように、最初の何回かをわざとつまらないものにしてるのもそのためさ。この日誌は読む者だけが読めばいいんだ。

てわけで、今やお馴染みさんとなった君にそろそろ教えてあげよう。あのコメントを受けたとき、この日誌はなんとタッタの六十回しか人に開かれていなかった。五ヶ月間で六十だぜ! 一回更新する毎に、三、四人にしか読まれていなかったのさ。ひでえもんだろ。最初の日に開いたやつが十人ばかりいるにはいたけど、それはもちろん〈読んだ人数〉とすることはできない。あの時点にこれを開いてまともに読んだ人間は、最大に見積もっても五人だった。六人でも七人でもない。五人だ。必ずそれ以下だ。

たったの五人。なのにそのうちひとりがあれを書いて寄越しやがった。

そのとき、さぞかし得意な気でいたんだろうな。文面に『どうだ泥を塗ってやったぞザマーミロ』って心情がみなぎってるだろ。

あいにく、おれはあのときに『ゴルディオン』の古代がシュミレーターでやる模擬空戦の場面を書いているところで、それが終われば休むことを決めていた。『マゼラン星雲に受ける感銘』の文もすでに頭の中にあり、休みと同時に出す考えでいたのだった。

まさかコメントが来るなんて想像もしていなかったから、『西部警察パトレイバー』を更新したときぜんぜん気づかないでいて、ずいぶん経ってメールチェックで《コメントが入ってますよ》というのを見て初めて『え?』と驚いたのである。

おれは滅多にメールチェックなんてしないんだけどね。人にメールを送らないから、人から受け取ることもないのさ。コンピュータやインターネットなんてほんとは大嫌いなんだから。

だからヘタすりゃもっと長く気づかずじまいになるとこだった。いや気がついてよかったですよ。あれについては、頭の中でもう出来ていた文に、〈新選組うんぬん〉と一行書き加えただけだ。

もっと早くに〈豊田有恒うんぬん〉と書こうと思えば書けたのは、『ヤマト空想科学教室7』をちょっと開けて読み、その日付を確かめてみればわかるだろう。おれは後からあれに変更を加えていない。それも見ればわかるだろう。証拠は歴然としているはずだ。

あのウツボ君、いつの間にかこのサイトを退会してしまったようだが、許すもんかよ。〈じぱんぐ〉だ。あいつはその名を使っていた。おれをナメたらどうなるか他へのいい見せしめとして、ずっと吊るしておいてやる。

じぱんぐ君は今は一体どこで何をしてるんだろうね? 案外、まだこのサイトにいて、彼の読者に「どうして一度退会したの?」なんて言われているのかしらん。「いえ、違います。アカウントを乗っ取られてしまいまして……」とでも言い訳してるのかな。でもって、


「へえ。退会なんてこと、普通わざわざしないだろうから、一体何があったんだろうと心配してしまいました」


そんなふうに言われてるのかもしれないな。

それとは別に、『セントエルモ』に読者マークを付けたのがひとりいるのも気づいてるよね。あれについても後から来た人に教えてあげるが、あのマークが付いたのはタイタンで古代が〈ゆきかぜ〉の残骸を見つけ、これから戦闘が始まるというときだった。

で、それっきりだけど、こっちの彼(まさか彼女じゃあるまい)も今は一体どうしてんだか。まだおれを読んでたとしても二度とマークは付けないだろうな。この日誌はチェックしてないだろうから、今おれが更新してるの知らんのじゃないかな。

けれどもそれも、おれの知ったことじゃない。せいぜい二次のサイトを眺めて他のキモワルが出すもの読みつつ、『いつ再開するんだろう』と思ってりゃいいんだ。ひょっとしてこれを読んでる君らの中に、彼がどこの何者か知ってる者がいるんじゃないのか。でも決してこの更新を教えてやる気はないんだろ。

それじゃしょうがねえよなあ。おれも知ったことじゃないもの。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之