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俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(下)

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第13部 幕は下りた



胸に手を当てる
までもない

卑劣も卑劣な
敵前逃亡

チェジュであんたを
ほったらかした

合わせる顔も
ないまんま
後ろめたさか
バツの悪さか
俺は嘘まで
ついたのに

あんたがそれすら
真に受けて
家まで見舞いに
すっ飛んできた
今日という今日

男としてより
人として
なけなしの良心が
悲鳴をあげた

限界だった
白旗上げざるを
得なかった

まさか
こんなふうに
芝居の幕を
下ろそうとは

それも
俺の方から

「弁解はしない
契約破棄だ
責めを負うべきは
俺だから
500万は
返済不要」

いくら俺でも
この期に及んで
こればっかりは
誠心誠意だったけど

食うにも食らった
渾身の
平手打ち

そしてあんたは 
息もつかずに
まくしたてた

「500万ぽっちで
人の心を
買ったつもり?
私の心は500万?

ハルラ山に行こう?

まともな神経で
あれを聞いたら
誰がどう聞いたって
プロポーズ

それを
恋人でもない
女に向かって
いけしゃあしゃあと

そういうのを
世間じゃ
二股って言うの

こんな呆れた
世間知らず
好きになった私が
バカだった

好きだって
口走ったのは
取り消すから」

圧巻だった

顔じゅう
涙まみれのくせに
目をそらそうとも
しなかった

俺は
ひっぱたかれた
ほっぺたの痛さも
忘れてた

サムスン

どうしてそう
堂々と
自分の心を
相手にさらせる?

隠したり
繕ったり
したいと思った
ことはないのか?

本心を
他人になんか
見せたら最後
上げ足とられて
すくわれるって
怖くなったり
しないのか?

あんたの舌鋒は
いつだって
真っすぐすぎて
容赦なさすぎて

聞いてるこっちが
こっ恥ずかしくて
身が持たない

出逢ってこのかた
まともな返事の
ひとつもできた
覚えはないし

できた覚えも
ないまんま
今日を境に
赤の他人に戻るのが
何でだか
いまいましくて
受け入れがたくて

ふり返りもしない
あんたの背中に
これだけは言わずに
いられなかった

どの面下げてと
笑われようが
もう1回
ひっぱたかれようが
かまわなかった

「ハルラ山のことは
嘘じゃない
本気だった」

ひっぱたくどころか
怒鳴りもしないで
憐れむような目で
ふりむいて
あんたは
ポツンと
たった一言

「ハルラ山なら
彼女と行けば?」

もう
ぐうの音も
出なかった