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秋月かのん
秋月かのん
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第1章  10話   『ボーイミーツガール??』

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<1章=いつもの風景>


さぁてあっという間に昼休みに突入だ。
机の教科書をかたづける者、鞄から弁当を取り出す者もいれば学食まで足を運んで昼食にする者とみんな様々である。俺?俺はもちろん決まっているさ。

「ハルちゃん~お昼ごはんにしよ~」

俺の後ろの席から小動物のようにひょこっと顔を覗かせ、今日もにこにこ~満点な冬姫。

「お腹ずいだぁ~早く食べようよごはん」

情けない声かつ顔で机に突っ伏すかえで。
…なんてはしたない。仮にもあなたは女でしょ。

「お~春斗。早く飯にしようぜ~。あたし腹減った~」

あぁお前もか茜…。まったくこいつらは…。
もっと女としての自覚をもって生活しろよな。

「まぁいいか。じゃ飯にするか~。おーい!ミナー!昼飯にするぞー!早くこっちこいよ~」

俺がそう言うと、ミナはくるりとこっちを振り向いてにこっと微笑を浮かべ、まるでわかりました~と返事をしているようだった。…いや、ホント和むね。

そして、ミナは可愛い布で包まれた弁当箱を持ってパタパタとこっちにやってくる。

「お待たせしました。あれ?ヒナちゃんはお昼どうするんですか?何も持っていないようですが…」

ミナはあれれ~?っと不思議そうな顔で俺を見つめていた。

「ふっふっふ…。それはな…」

「あはは~。ハルちゃんはね~私と明日香ちゃんと交代でハルちゃんのお弁当作ってるんだよ~。今日は私が当番なんだ~。ということで、はい、ハルちゃん~お弁当~」

「お~サンキュー冬姫。今日の弁当も美味そうだ」

「そうだったんですか。でも、ヒナちゃんお料理しないんですか?明日香ちゃんからによるとヒナちゃんもお料理するって聞いてますけど…」

「おぉするぞ~。でもな…男ってのはいろいろと忙しいもんでな。ついそっちのことを疎かにしてしまうもんなんだ」

「そうでしたか。ヒナちゃんって毎日とっても忙しかったんですね。私そんなこと全然知らなかったです」

「そうなんだよ~。だから、こうやって俺に代わって冬姫と明日香が弁当を交代で作ってもらってるんだよ」

「そうだったんですか!ヒナちゃんってやっぱりすごい人だったんですね♪何をしているのかは知らないですけどえらいですよ!私、感動しました!」

ミナは瞳をキラキラと輝かせて俺を見つめていた。

「ミナちゃん…あのな、ミナちゃんの感動をぶち壊すようで悪いが、春斗はただ面倒だからやらないだけで、それをただ恰好良くいいわけしてるだけだから」

「…え?そうなんですか?」

「茜ッ!!お前何てことをッ!!」

「うるせーな!いいじゃん、だってホントのことだろ?」

「う……」

俺は、茜に図星を突かれ、二の句をつげずに押し黙ってしまったのだった。

「ミナちゃん、春斗の言うことは話半分に聞いた方がいい。こいつたまにこうやってわけわからんこと言い出すからな。それを全部本気にしてたら身がもたないぞ」

「え、でも、ヒナちゃんは嘘つきませんよ~!だって、昔から本当に私のこと助けてくれたんですよ!私が困ったり悲しくて泣いていたとき、どこからともなく駆けつけてきてくれたんですよ!!…だってヒナちゃんは…」

ミナは真剣な顔で必死になって俺のことをフォローし、擁護してくれていた。

「わ、悪い…」

そんなミナの気迫に圧倒されたのか茜は説教をさせられた悪戯小僧のように押し黙ってしまった。

「ん~、やはりミナタンはもう既に春斗にメロメロだぁ☆感情値も一定値を軽くオーバーしてるに違いない☆いざッ!ミナタン・ザ・ルートへGOGOGO~☆」

ぶんぶんと激しくアグレッシブに、えいえいおーを倍速でするかえで。

「ってしないわぁッ!!すぐゲーム思考に走るんじゃねぇッ!!」

俺はかえでの脳天に手加減なしのチョップを思い切り叩き込んでやった。

「あいたぁ~!何すんだよ~!せっかくあたしがミナタンのルートへ進めたことへのお祝いの祝杯を挙げようとしてんのにさ」

「ってそんなのいらねぇしッ!!まったく馬鹿なこと言ってるなよ馬鹿者が。あんまり馬鹿なことばっか言ってると今にかえでも暁みたいになっちまうぞ」

俺は最強最大最低の『最』が勢ぞろいの殺し文句をかえでに言ってやった。

キラーン☆

急にかえでの顔が怒りに満ちた表情に豹変し、ドスの効いた押し殺した声でこう言った。

「…ねぇ、今…春斗、何て言った?」

「はぁ?…何てって馬鹿なことばっか言ってると暁みたいになっちまうぞって言ったがそれがどうした?」

「馬鹿やろうーッ!!」

「うぼわぁッ!!」

いきなりかえでの右ストレートが俺の頬にクリティカルヒットする。…ってこのやろう。

「ヒナちゃん!?」

「ハルちゃん?!」

「この馬鹿かえでッ!!テメェいきなり何しやがるッ!!」

「春斗ーッ!!お前は今、あたしに言ってはならないことを言ってしまったッ!」

かえでは何だか知らんが顔を真っ赤にして激昂していた。…わけわからん。

「何だよッ!その言ってはいけんことってのはよッ!?」

「それはだね~。………あたしが暁みたいになるっていう戯言に決まってるだろうッ!!」

かえではビシーッと俺に向けて指差しながら、大声でそう叫んだ。

「それが何だってんだよッ!!」

「春斗…。お前はわかってないッ!!全くと言ってわかってないッ!!いい?あたしはこの業界で頂点を目指してるんだ。チラリズム、エロ、属性、そしてッ!!何といっても『萌え』だッ!!これはとても奥が深い…それに真に理解するのも難しいんだ!!でも、日々あたしはこれらの要素を真に理解できるよう修行に励んでいるんだッ!明日への高みの地位を目指して…。それを何だって?暁みたいになっちまう?」

「笑わせるなッ!!暁はライバルだ!!あたしの敵なんだよ!!そんなヤツとあたしを一緒にするんじゃなーい!!わかったか?!馬鹿春斗ッ!?」

かえでは熱血野郎の如く一通り自分の言いたいことを話し終えて、俺に理解したかどうか問いただしているようだった。…まったく、それがどうしたんだってんだよ。

俺は当然、理解も出来ないししたくはないので、不敵な笑みを浮かべこう答えるのだった。

「へッ!そんなもんわかりたくもないな~!頂点を目指す?暁がライバル?そんなの俺の知ったことか!いつまでも馬鹿な寝言吐いてんじゃねぇッ!」

「何デスとぉッ!?馬鹿な寝言…それは聞き捨てならないね~!」

「馬鹿に馬鹿と言って何が悪い。それにな~お前は一つ大事なことを忘れてるぞ。一つのことに目を向けすぎて我を見失い、そして、その重要なことから目を背け逃避してたんだよ!」

「あ…あたしが何から逃避してたっていうんだよ」

かえでは思い当たるふしがあるのか少々動揺しているような面持ちで後ずさる。

「簡単なことだ。それはな……かえでが社会性ゼロで社会不適合者という真実からに決まってるだろッ!!」

「うぐ…」

かえでは図星を突かれ、二の句がつげず言葉に詰まっていた。

「言い返せないだろ?そりゃホントのことだからしょうがねぇよな」

「ぐぬぬ…」