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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

INDEX|35ページ/40ページ|

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「たぶんじいちゃんは、若い頃、俺と同じことをしてここで一族の秘密に触れた。そして隠した・・・そんな気がする」
「隠した・・・って?なぜ」
「俺に見せないため。俺や神末に関わる者たちに見せないため。見れば歴史が覆る・・・瑞はそう言っていた。だからじいちゃんは隠したんだ。一族のために。隠したというよりは、託した・・・のかな」

カタ、と音をたてて蓋が開く。中には、数冊の和綴じと、紙の束が入っていた。ぼろぼろだ。紫暮は手にとって検める。

「天長・・・承和・・・これは平安時代に書かれたものらしい」

随分と、古い。全部で七冊ある。紙の束は随分多い。そして、箱の一番底から、もう一つ出てきたものがある。

「これ・・・櫛ですか?」

伊吹が手にしているのは、古ぼけた櫛だった。櫛といっても、髪を梳くような一般的な櫛ではない。飾り櫛、というのだろうか。半月の形をしており、下部分がぎざぎざになっている。それもところどころ欠けていた。木でできているようだが、古いためか黒ずんでいる。手のひらにおさまるくらいの、小さな飾り櫛だった。目をこらせば、何か模様がほってあるようだがよく見えない。

「紫暮さん、この櫛・・・瑞の気配がする」

伊吹の言葉と一緒に櫛を受け取る。確かに、魂の気配とでも言うのか、あの憎らしい式神のかすかな残滓のようなものを感じた。皮膚ではなく、心で感じ取れる。