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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

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「ハアッ、ハアッ、ハアッ・・・くっそ・・・」

やはり、夢か。なんという夢だろう。だけど、夢にしてはやけにリアルで、髪に手のぬくもりが残っているような気さえする。

「大丈夫かい」
「・・・はい、すみません驚かせて」

地下にこもりっぱなしで、気がふれてしまったと思われただろうか・・・。さすがにいまの夢のことを話すのは憚られた。

「誰も、ここに入ってませんよね?」

首に巻いた手ぬぐいで汗を拭きながら、紫暮が頷く。

「俺はずっとここで草むしりしてたけど・・・誰も来ていないよ」
「そうですよね・・・」

やっぱり夢か。寝ぼけていたのだろう。

「もうお昼にしようか」
「あ、はい・・・じゃあ俺、下片付けていきます」

息を整えながら地下へ戻る。そして唐突に思い出す。

「鍵っ・・・!」

ズボンのポケットに手を突っ込み、伊吹は全身が総毛だつのを感じた。

冷たく、堅い感触。夢で見たあの鍵が、伊吹の手のひらにある。こんなもの、自分で入れた覚えがない。ではやはり、あの夢の瑞が?

(・・・紫暮さんが言っていた。あの森の夢は、瑞が無意識に見せているものだと)

瑞は心のどこかで、隠されている己の事実を伊吹に知ってもらいたいと感じている。それが無意識の形となって現れ、こうして鍵を運んできたとでも言うのか?

衝撃的な体験だ。夢と現実が繋がった?それとも、あの夢が現実だったとでもいうのか?

伊吹は鍵を握り締め、夢で瑞が隠した箱を探す。