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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

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朝早くから、伊吹と穂積(ほづみ)が居間で時刻表を広げている。自室から出てきた瑞は、それを遠めに眺めた。どこか行くのだろうか。

「えっと・・・この駅で乗り換えるんだよね」
「そう。特急待ちで10分くらいあるから、慌てなくていいよ」
「わかった。書いとく」
「京都駅まで紫暮くんが迎えに着てくれるから」

京都へ行くようだ。それも乗換駅や時刻を一生懸命にメモしているところを見ると、伊吹が一人で行くらしい。

「一人で行くのか」
「うん。連休中、清香(きよか)さんのところでお世話になるんだ」

ああ、そういえばそんなことを言っていたな。須丸文庫(すまるぶんこ)だ、と瑞は思い出す。あの屋敷にある膨大な記録を閲覧に行くのだと行っていた。歴代のお役目のこと、呪術のこと、歴史・・・。あそこになら、伊吹の知りたいことがあるかもしれない。

式神としての瑞のこと。

「そろそろバスの時間だな」
「じゃー行ってきまーす」
「気をつけてな」

瑞は、穂積と伊吹のやりとりを見つめながら思う。次に伊吹がここに戻ってきたとき、このままの関係でいられるのだろうかと。伊吹の知りたい真実は、伊吹が考えている以上に残酷だ。彼の生き方を根底から覆してしまうだろう。

「何を知っても、何も変わらない・・・そうだよね、瑞」
「・・・」

同じことを考えていたらしい伊吹が、念を押すように言った。不安なのだろう。自分と同じように。事実を知ることから生じる変化が怖いのだ。