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フリーソウルズ

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#3.七尾ひめとの出会い


#3.七尾ひめとの出会い



広島県宮島町
晴れた日の厳島神社の回廊。
和装の花嫁衣装を着た桐恵が、俯き加減でゆっくり歩を進める。
桐恵の隣を母親らしき女性が付き添っている。
回廊の反対側の柱の陰から、桐恵を見つめている寛治。
寛治は紋付き羽織袴姿で、手に扇子を持たされている。
廊下を曲がり寛治に近づく桐恵。
桐恵は俯いたままである。
寛治の隣に立つ年配の男が寛治に言う。


男   「綺麗じゃのぉ、寛治。大事にしんさいよ」


桐恵が気づいてほんの少し顔をあげる。
白塗りの口元に真っ赤な紅を引かれた桐恵の唇が目映い。
目の前を通り過ぎる桐恵に初めて口を開く寛治。


寛治  「きりちゃん・・・」


  ◇    ◇    ◇    ◇


第一農業高校 2年A組
試験中の教室
テスト用紙を前に居眠りする裕司。
生徒たちの間を監督しながら行き来する教師の馬淵。

恭一  「ユウジ(小声で裕司を揺り起す)」
馬淵  「椿谷、余裕だな。テスト中に居眠りするとは」

慌ててうなだれた頭を持ちなおす裕司。

馬淵  「できたのか、回答?」

まどろみながら馬淵に答案用紙を手渡す裕司。

馬淵  「わかってるだろうが、テストの成績が悪かったら、いくらタイムが良くても、駅伝の選手に選ばれないからな」

答案用紙に答えがすべて書かれているのを確認する馬淵。

馬淵  「ところで椿谷、きりちゃんって誰だ?」

教室に抑えた笑い声が起こる。



高校からの帰り道

恭一  「それで、そいつらやっつけたのか?」
裕司  「わかんない・・・」
恭一  「わからない、って、ユウジ、相手は3人だったんだろ?」
裕司  「ああ。気がついたら3人とも倒れててさ・・・。なんか変な感じだった」
恭一  「今夜も現れたりしてな、その不良たち」
裕司  「だから、頼んでるんだろ。一緒に走ろうって」
恭一  「なんでだよ。まだ明日も試験あんだぜ」
裕司  「試験より、日曜日の記録会だよ」
恭一  「無理だって。うちの神セブンに勝てっこないって」
裕司  「やってみなきゃわかんないだろ。とにかくいいタイム出して上位に食いこんで、馬淵の鼻を明かしてやりたいんだ」
恭一  「きりちゃーん、か?」
裕司  「(むっとする)」
恭一  「俺じゃないよ。馬淵が茶化したんだ」
裕司  「頼むよ、恭一。付き合ってくれよ」
恭一  「やだよ。夜走るなんて、こぇえよ」
裕司  「お前、親友だろ」
恭一  「俺、帰るから。お前病院寄るんだろ。じゃあな」
裕司  「おい、きょーいちぃ」

恭一のうしろ襟を掴む裕司。
裕司と恭一がふざけ合っているところに、制服姿の七尾ひめが金井カーネル真凛を伴って現れる。
ひめと真凛ふたりとも、琴和女学院の制服姿。
真凛は、ギターケースを背負っている。
襟を掴まれた恭一がふたりに気づき、「あっ!」と声をあげる。

ひめ   「どうも(裕司に微笑みかける)」

恭一の襟から手を離す裕司。
乱れた身なりをすまし顔で直す恭一を見つめる裕司。

裕司  「(自分に声かけられたと気づかず恭一に)知り合い?」
山本  「ほら、あれ」

真凛のギターケースのネックに貼られたステッカーを顎で示す恭一。
さらに裕司にステッカーを見るよう促す恭一。
ステッカーには、デザインされた“姫君”のロゴ。
ロゴを見てもピンと来ない裕司。
やにわに恭一の腕を掴む真凛。
裕司から恭一を引き離す真凛。

恭一  「何これ? 逆ナン?」
ひめ  「(恭一に)大丈夫、真凛は男に興味ないから」
真凛  「そういうこと」

恭一の手を軽く捻りあげる真凛。
ひめと裕司をふたりきりにするため、恭一を引き連れて離れる真凛。
バイクで出前中のノブがひめたちに気づいてバイクを停める。
遠目にひめや真凛、裕司や恭一の様子を観察するノブ。

ひめ  「(裕司に)きのうは、ありがとう」
裕司  「(自分の鼻先を指し)僕?」

身に覚えのない裕司。

裕司  「僕、何かしたっけ?」
ひめ  「今度の日曜に、駅前のショッピングセンターでミニライブやるの。よかったら見にきてください」

日付と写真入りのフライヤーを裕司に手渡すひめ。
フライヤーを受け取りながら、昨日何をしたか思い出そうとする裕司。
すると、裕司の首にひめが抱きつく。
顔が真っ赤になって、心拍数がマックスになる裕司。
裕司の耳元で囁くひめ。

ひめ  「あなたもフリーソウルよね。もうすぐ大変なことが起きるの。誰も信じちゃだめ」

身体を離して裕司に微笑みかけるひめ。
ひめの髪の甘い残り香にしばらく酔いしれる裕司。
うわの空だが、ひめの囁き声は何となく耳には残っている。

恭一  「ええぇ??」

遠目に見て呆気にとられる恭一。
裕司のもとに駆け寄ろうとするが、真凛に腕を掴まれて動けない恭一。

ひめ  「ライブで待ってます。ちゃんとお礼がしたいから」

腕を解放され弾かれたように裕司のもとに駆け寄る恭一。
ただ立ち尽くす裕司と動揺する恭一を残して立ち去るひめと真凛。
その一部始終をバイクのシートに跨ったまま目撃するノブ。
やや興奮した面持ちで、スマホを取り出し電話するノブ。

ノブ  「カツさん、大変です。ゆうべのジャージ野郎が・・・」


  ◇    ◇    ◇    ◇


県立総合病院につづく通りを歩く裕司と恭一。

恭一  「(興奮気味に)なんて言ったんだ、姫君? お前に何か囁いてたろ」
裕司  「いやぁ、あんまり憶えてない・・・」
恭一  「嘘つけ。何かエロい言葉言ったんじゃないの?」
裕司  「いや、ソウルがどうとか、大変なことが起きるとか・・・」
恭一  「何、それ?」
裕司  「憶えてないんだよ、舞い上がってて」
恭一  「で、どうすんだ? 日曜日、記録会」
裕司  「出るよ。出るに決まってんだろ」
恭一  「(呆れて)お前、バカか。琴和の姫君のボーカル、七尾ひめに直接誘われたんだぞ。フライヤーまで渡されて。しかもちゃん
とお礼をしたいって。それを断るバカがどこにいる」
裕司  「記録会サボって、女子高のバンド聴きに行く方が変だろ。それに彼女、誰かと勘違いしてるんだって」
恭一  「勘違い上等。俺なら行くけどな」
裕司  「だったらお前行けよ」
恭一  「俺が行っても、手捻られるだけ」
裕司  「部活の選考会優先。だから今夜さぁ・・・」
恭一  「パスパス! じゃあな」

病院の建物を背に、車の隙間を縫って反対側の歩道に渡る恭一。



県立総合病院
病院の遊歩道を歩きながら、病棟を見上げる裕司。
手に持っていたフライヤーをカバンにしまう裕司。

病院の廊下
思いがけず麻衣子の後姿を廊下で見かける裕司。
麻衣子が志津子の病室に消える。
志津子の病室に入ろうとして直前で立ち止まる裕司。
麻衣子と志津子の会話が聞こえてくる。

志津子 「そう、困ったわね」
作品名:フリーソウルズ 作家名:JAY-TA