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フリーソウルズ

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裕司  「姉ちゃんは本当のこと、知ってるんだろう?」
麻衣子 「知るはずないでしょ」
裕司  「僕は椿谷の子じゃないだろ?母さんの子でも父さんの子でもない。だから僕は父さんに・・・」
麻衣子 「違う。全然違う」
裕司  「父さんのことはよく憶えてない。でも母さんは・・・」
麻衣子 「よく聞きなさい、裕司」
裕司  「いいよ、どうせ本当のことは言ってくれないんだろ・・・」
麻衣子 「裕司!」

裕司の右頬を平手で叩く麻衣子。
右頬を押さえ麻衣子を睨みつける裕司。

麻衣子 「母さんがどんなに苦労したか、あんたの病気のことで・・・」
裕司  「そんなの知らないよ!」

席を立ち、フードコートを飛び出す裕司。

麻衣子 「待ちなさい!」



小さな公園
雨に濡れながら息を切らして公園にたどりつく裕司。
茂った枝葉が雨避けになっているベンチに腰掛ける裕司。
肩で息をして俯く裕司の視線の先にひめと綾乃のパンプス。

ひめ  「日曜日、どうして来てくれなかったの?」
裕司  「・・・」
ひめ  「きょう学校休んだんだって?」
裕司  「・・・」
ひめ  「うららが言ってた」
裕司  「関係ない」
ひめ  「隣に座ってもいい?」
裕司  「よくない」

畳んだ傘をひなから受け取る綾乃。
かまわず裕司の隣に座るひめ。
もぎたてのイチゴがいっぱいに入ったレジ袋を裕司の目の前に差しだす。

ひめ  「うららからもらったの、朝摘みイチゴ。食べよ」

無視する裕司。
イチゴを半分かじるひめ。

ひめ  「あ、美味しい。君もどう?」
裕司  「うざい!」
ひめ  「(イチゴを頬張りながら)君、椿谷裕司くんっていうんでしょ?」
裕司  「なんで名前・・?」
ひめ  「うららから聞いたの。陸上部の補欠」
裕司  「(むっとする)頼むから消えてくれ」
ひめ  「駅前の交通事故、スゴかったね」
裕司  「・・・」
ひめ  「あの交通事故、君が起こしたんだよね」
裕司  「僕じゃない」
ひめ  「何か悩みごと?」
裕司  「・・・」
ひめ  「わかるなぁ・・・」
裕司  「何が?」
ひめ  「わかる。だって君とわたし、同じなんだもん」
裕司  「どこが?どこが同じなんだ?」
ひめ  「君はまだ気づいてないだけ」
裕司  「うざい、うるさい。君たちとは話したくない。君に近づくなって言われたし」
ひめ  「えっ、誰がそんなこと?」
裕司  「誰でもいい。とにかく君に会ってから、ろくなことがない。僕は君たちとは違う。ギター背負って青春してます、みたいなツ
ラ見てるとムカツくんだよっ!」

ベンチから立ち上がる裕司。
ギターケースを背中に背負っている綾乃が固まる。
泣き顔になる綾乃。

ひめ  「ひどい!」

綾乃に駆け寄るひめ。
レジ袋からイチゴがこぼれ、辺りに散乱する。

綾乃を慰めるひめ。
昂じた感情を公園の楡の木の幹にぶつける裕司。



作品名:フリーソウルズ 作家名:JAY-TA