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萌葱色に染まった心 3

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第二章 紅きペンダント

 東京行きのフェリーが出発しようとしていた。
 バルキュウリオンの事も知りたいし、ペンダントのことも気になる。運転士ながら話を聞くわけには行かないので、フェリーに乗って東京に向かうというアイデアは、実に都合がよかった。
 お金を持っていない志穂の分も負担するのは、実のところ苦痛ではあったが、この際仕方がない。彼女を連れて行くべきところに連れて行けば、きっとフェリー代くらいはかえしてもらえるだろう。
「あの、ごめんなさい。あたしの分もお金を払ってもらって……」
 申し訳なさそうに志穂は呟いたのは、個室に入ってからだった。二人部屋というのは気が引けるが、話をするのには都合がいい。まさか、隣で誰が聞いているか分からない場所で、鬼のことを話すわけにもいかないだろう。
「気にするな」
 徹は荷物を置きながら呟いた。
「ここなら邪魔は入らないだろう。さあ、話してもらおうか」
 徹がそう言ったのは、フェリーの個室に荷物を降ろして一息着いた頃だった。
「そうね、話すわ。といっても、あたしが知っていることは、ごく一部の事でしかないけど……」
 志穂はそう前置きすると、鬼について、知りうる限りを語り始めた。物心ついた頃には、志穂はハンターと呼ばれる組織にいた。
 組織のリーダーに助けられ、育てられた。両親は鬼の犠牲になったらしい。
 彼らは主に夜に行動していた。昼間は人間社会にとけ込んでいるので、見た目がそっくりだということもあり、影を潜めているが、日が落ちると活発に行動を開始する。狙った獲物を追いつめ、殺して食べる。
 狩人のような彼らの性格は残忍だということしかわからない。情を持って接することなど、皆無に等しかった。
 志穂が徹に話したのは、だいたいそういう内容だった。徹は信じられないといった面もちでそれを聞いていたが、やがてすぐに納得した。
「本当に、そんなやつらが?」
「本当も何も、実際に目にしたでしょう?」
 昨日の夕方会った男と、今朝の男。どうやら別人だと思うが、どちらも人間離れしていたのは確かだ。あの俊敏な動きとかを考慮すると、この話も素直に頷ける。
「それで、これからどうするつもりだ?」
「うん。あたしは、ここに行きたいんだけど……」