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アナザーワールドへようこそっ!  第二章  【042】

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「もう会長……、そんな『異世界人』を脅すようなこと言ってどうするんですか?」


 と、ドアの向こうの人物が、生徒会長にツッコミを入れた。

「んっ? おお……遅かったな、副会長…………ケイティ・ブランドンッ!」
「「ふ、副会長……?」」

 俺とシーナがその副会長……ケイティ・ブランドンのほうに目を向けると、彼女は二人に微笑んで会釈をした。

「はじめまして……シーナさん、ハヤトくん。わたくしは生徒会副会長のケイティ・ブランドン。今、ヴィクトリア様から話があったとおり、ヴィクトリア様とリサ様の幼なじみで、ヴィクリア様の分家貴族の者です。どうぞ、よろしく」

 と、ケイティ・ブランドンは二人にていねいに挨拶をした。

 見た目、『ちょっと厳しい家庭教師』というコンセプトを感じさせるような栗色のショートヘアが、会長のヴィクトリア・クライフィールドとは違う『凛々しい女性らしさ』を醸し出していた。

「ぶ、分家貴族……?」
「はい……『分家貴族』とは、『名門貴族の分家』のことで、要は、『名門貴族』の身の回りをサポートしている貴族のようなものと思っていただければ結構です。ちなみに、わたくしの場合は『風属性の名門貴族・クライフィールド家の分家』ということになります」
「まあ、『分家貴族』とは言っても、私からすればそんなの関係ない…………ケイティは、ただの『大切な幼なじみ』だ」
「ふふ……ありがとうございます、ヴィクトリア様」
「だから、私としては、そのお前の言葉遣いも直したいのだがな……リサはともかく、私には『様』をつけなくても…………」
「ダメですよ、ヴィクトリア様。そこは最低限必要な『名門貴族への礼儀』ですから……」
「わかってるよ…………まあ、それくらい私とケイティはつながっているということだ」
「「は、はあ……」」

 まあ、とりあえず、二人が仲良しなのはわかりました。

「とまあ、そういうわけで、幼なじみのリサから、君たち二人の『護衛・サポート』を頼まれたってことだ。そして、私もケイティもそのリサの依頼を全面協力していくつもりだ」
「私もケイティも……?」

 シーナが、ヴィクトリア・クライフィールドのその言葉に反応した。

「うむ……察しがいいな、シーナ君。実は、このリサからの依頼は、表立って協力することができなくてな…………基本、このサポートの話を知っているのは私とケイティだけだ」
「二人だけ? そ、それって……?」
「……ああ、サポートできるのは、あくまで『私とケイティふたりだけ』で、生徒会自体でサポートするということではない」
「理由は……」

 と、ここで、副会長のケイティ・ブランドンが代わって説明をする。

「……理由は、この生徒会の中にも『王立軍幹部の内通者(スパイ)』がいる可能性があるからです……」
「ス、内通者(スパイ)……?」
「はい。なので、国費で賄われている生徒会を使ってそんな依頼を協力してしまうと、この『内通者(スパイ)』が『女王陛下が国費を使って自身の営利目的のために無駄遣いをしている』などといった内部告発(リーク)をして、いろいろと後で面倒になりかねないという懸念があるので、二人のサポートはあくまで『リサ個人の依頼』として、わたくしとヴィクトリア様二人だけで受けるという形でしかできないというわけなんです」
「……な、なるほど」
「……ですが、わたくしとヴィクトリア様は『生徒会長』と『副会長』というポジションです。なので、ある程度は、生徒会は利用できますからサポートのほうは大丈夫だと思いますのでご安心ください」
「まあ、そういうことだから、お前たちはこれからの学校(アカデミー)生活で不都合が出てきたときは、この生徒会室に来て、私か、副会長のケイティに相談してほしい。そうすれば、こっちとしても、よりサポートしやすいからな」
「「か、会長……」」
「ヴィクトリア様の言うとおりです。何か困ったことがあったら、ここに来てわたしか会長を呼んでくださいね。ちゃんとサポートしますから。だから……安心して学校(アカデミー)生活を楽しんでください」
「「ふ、副会長……」」


 な、なんとも心強い言葉だった。

 この二人が、まさか、俺たちのサポート……味方になってくれるだなんて。

 一時はどうなるかと思っていたが、まさか、リサが俺たちに対して、そこまで考えて、そこまで行動してくれていたとは……。

 リサ……すげえよ、リサ。


「というわけで話はここまでだ。とりあえず、このことはこの四人だけの秘密だ、いいな?」
「あ、あの……」
「んっ? 何だ、シーナ君? 質問か?」
「は、はい……あの、このこと、アイリに話してもいいですか?」
「? なぜだい?」
「彼女はわたしとお兄ちゃんがこの世界(アナザーワールド)に来てから、いろいろと世話してくれている子なんです。だから、アイリにも話をして一緒に協力してもらいたいんです…………ダメ……でしょうか?」

 シーナは少し甘える感じで、ヴィクトリアに訴えた。

「あぁ……なんと、かわいらしいっ! そんな、かわいらしいシーナ君の頼みとあらば…………断るわけにはいかないな」
「えっ?! そ、それじゃあ……」
「……アイリ君にも協力してもらうよう頼んでください」
「あ、ありがとうございますっ?!」
「でも、このことはアイリ君にもちゃんと『秘密』だと伝えるんだよ?」
「は、はいっ! わかりましたっ!」
「ふふ………まったく、しょうのない子だ…………愛い奴め」

 ヴィクトリアさん、『チョロイン』でした。

 と言ったわけで、『生徒会』の『特別招待生の捜索』の目的は、『リサからの依頼』で『俺とシーナをサポートする』という話を伝えるためだった。それまでは、どうなることかとヒヤヒヤもんだったが、まあ、結果オーライということでようやく安心した。


 そうして、俺たちは会長と副会長にあいさつをし、生徒会室を出て、寮へ戻っていった。