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短編集『ホッとする話』

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 20年前の2月も神戸に雪が降った。
 僕はそのころ、昨年の受験に失敗し再起をかけてもう後のない浪人生活をしていたころだ。前の月にあったセンター試験、結果志望校はボーダーライン。センターで大幅なアドバンテージを目論んだ僕の作戦は微妙なものとなった。そんな中滑り止めで受けた第二希望の大学の合格発表があった。
 その日は朝から大雪だった。本命の二次試験を控えていたが僕は勉強を一旦お休みして、電車に乗り神戸から隣の市にある大学に向かった。
 試験は発表から一週間前、元々裕福な家ではないので受けられる大学が家から通えるところで、且つ滑り止めで受けられるのも一つだけだったので緊張のあまり駅から学校へ向かう道中がどんなだったか覚えてなかったが、今日改めて道を歩いているといろんなものが目に入った。所々に残る雪、直線の向こうに見える大学のキャンパス、道行く人びと。すれ違う人は安堵と喜びの表情か逆に沈んだ表情のどちらかで、後ろを向けば自分を鏡に映したように複雑な表情をしている人が歩いている。顔に書いてあるというのはまさにこのことだ。人の一生の方向を決めるのだから顔に出るのは当然といえば当然と思う。

 僕は大学の正門をくぐり抜け、正面に見える芝生は真っ白で一面の雪景色だった。先週来た時にはそんなものを見る余裕などなく、試験会場まで素通りするだけだったそれが、今日は素晴らしく綺麗なものに見えた。学生が作ったと思われる雪だるま、芝生の左右に建つ学舎、そして正面の向こうに建つ時計台――。第一志望の大学ではなかったからだろうか、自分の分身を芝生の真ん中に立たせて見たがうまい具合にイメージが湧かなかった。