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短編集『ホッとする話』

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 篤信は今、アメリカの大学院で研究員として病理の研究をしている。大学側の推薦もあったが、カリフォルニア育ちの妻の薦めもあり日本を離れることを決めた。

 3月の中ごろ、息子を寝かしつけた篤信は階下に降りると朱音がコーヒーを用意してキッチンのカウンターで待っていた。朱音は妊娠6ヶ月、安定期に入りコーヒーの匂いも問題にならなくなった。夫を気遣って自分が飲まないものを入れてくれる気持ちが嬉しい。
「お疲れさま」
 長男の聖郷(きよさと)は篤信が寝かそうとすると、簡単に寝てくれない。研究が忙しく起きてる時間に中々帰れないから、息子の顔を少しでも長く見たくなるからだ。聖郷もそれを知っているから一生懸命起きている。親ばかってのはこういうことなのかな、と思って聖郷の部屋にいると時間がすぐに過ぎる――。時計は頂点に近づきつつあった。
「あのね、篤信君」
 篤信はカップに口を着けると名前を呼ばれ、妻の目を見た。良いことがあったのか、少し嬉しそうな顔をしているのが仕草で分かる。
「どうしたの?」
「今日ね、悠里から連絡があって、『今度そっち行ってもいい?』って」
「え?悠里ちゃんが?」
悠里と言うのは朱音の妹のことだ。篤信からみれば一回り年下の高校2年生で二人の実家がある神戸に住んでいる、篤信にとって彼女がまだお腹の中にいた頃から知るほど身近な存在だ。妻が言うには彼女は春休みに『自分探しの旅』に出たいそうでこっち(アメリカ)に来るそうだ。

 義理の妹は当然妻と同じクォーターだがここ(アメリカ)には今から10年前に彼女が7つの頃に来たきりで、妻と違ってここで育ったわけでも彼女の成長に影響を与えたわけでもない。ただ、悠里には二つの国籍があって、自分のルーツについて調べようと思ったそうだ。
「ああ、大歓迎だよ」
「ちょうどその頃誕生日だから、パーっとしてあげようと思ってね……。というわけで、今年の誕生日の主役は悠里に譲ってやって、いい?」
 悠里は篤信と誕生日が一緒だ。妻から見れば11も離れた妹を思う姉の気持ちが素直に現れた言葉に篤信は釣られて微笑んだ。
「当たり前やんか。今までお祝いらしいことできんかったんでしょ?」
 妻はこくりと頷く。
 彼女の両親は離婚している、そしてその前段階から長く家がうまく行ってなかったので篤信の知る限りでも悠里は誕生日らしい誕生日を祝ってもらっていない。その頃から母代わりだった朱音だけでなく、篤信も彼女の17歳の誕生日を祝ってあげられることが嬉しくなって自然と二人の頬が緩んだ。