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秋月かのん
秋月かのん
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第1章  7話  『魔獣者』

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そう問いたくなるが、まぁ深く考える必要もないか。

「もう~!!ハルちゃんたちまたふざけてる~。ダメなんだよ~暁君を泣かしちゃ。大丈夫~よしよ~しもう大丈夫だよ~」

呆れた表情で登場を見せた冬姫は、そのまま泣いてうずくまっている暁に近寄り慰めるようによしよしと頭を撫でていた。

「いや、これは俺たちの勝負だから。手加減は一切許されない真剣勝負なんだ。それに俺たちは勝利した。ただそれだけのことだ。ふざけてるんじゃない。それにこいつは自業自得だし」

「そうだぜ。これはある意味あたしらにとって宿命と言っても過言じゃないあっついバトルなんだぜ」

「もう~2人ともまた意味不明なこと言って誤魔化すんだから。でも、何でこんなことになったの??」

はて、何でだっけ??というか俺たち何してたんだっけ??
俺は寝るはずだったが、この馬鹿に引き止められて、いつの間にか茜がいて…あれ??
俺の表情を読み取ったのか、

「もう~それすら忘れちゃったの??暁くん可哀相に…」

「んだよ。やけに今日はこいつに肩持つじゃないか」

「うるせー。冬姫ちゃんはお前らと違って心が澄んでるんだよ。優しいんだよ。お嫁さんにしたい上位ランクなんだよ。パーフェクトピュア少女なんだよ」

「おいおい、前者はわかるが、後者は何なんだよ。もはやどうでもいいわ」

「うわーん。春斗がまたいじめたぁ~。冬姫ちゃん慰めてくれ~」

「「調子に乗るなッ!!」」


-ズゴゴオォオオオオオン!!!


同時に俺と茜はこの馬鹿野郎に喝をいれてやる。根性叩きなおしてやるぜ。
しかし、こいつが馬鹿の肩を持つなんてな。もしや、冬姫のヤツ…。

「それはそうだよ。せっかくミナちゃんと仲良くしようと思って相談に来たのにそれをウヤムヤにしてふざけちゃったんだから見ていて可哀相だよ。ミナちゃんとお友達になりたい心を踏みにじるのはよくないと思うな」

プンプンと腰に手を当てて怒りなさる冬姫さん。毎度ながらそれは怒っているように見えませんよ。微笑ましいくらいの無邪気な少女みたいな面持ちのようですよ。

「もう~。ハルちゃんってばまた変なこと考えてるでしょ」

そしてまたここに新しい奇跡が誕生した。…って何で俺の心が読めるんだよ。
毎度ながらお前には驚かされるぜ。本気でエスパーの称号与えるぞ。
でも、まぁいらん心配だったな。こいつの心配じゃなくてミナの心配をしていたのか。
どうやら俺の取り越し苦労だったようだ。

「ってか結局お前は何をしたかったんだよ??」

当然の疑問を冬姫に慰められてる暁にそう訊ねる。

「よくぞ、聞いてくれた」

すくっと何もなかったかのように立ち上がる。

「実は、ミナちゃんにお近づきになるにはどんな話題で気を惹けばいいのか相談したかったんだ」

「普通に話しかければいいだろ」

「いやそれは無理ってもんだろ。初めてここに来たときからの反応からすると普通に近づくのは容易ではない。あれだけの人見知りの激しさとなっては一筋縄にはいかん。同じ女子同士でもあんなに怯えているのにましてや俺のようなイケメンなクールガイとなれば緊張せずにいられんだろうさ。それに、ムカつくことに唯一まともな人間がお前とあっちゃやってられないからな」

…どういう意味だそれ。

「ってことで、どうすればいいのか。お前の意見を参考にしようとこうやって遠路遥々やって来たのさ」

「そうか。それはご苦労だったな。じゃ、もう帰れ」

「春斗さまぁぁぁあああああああ~ッ!!」

暁が泣きながら俺にしがみ付いてくる。

「えぇい、うっとしい」

激しくうっとおしいのでこの馬鹿ヤロウを振り払う俺。

「おいおい~おい!!そりゃないぜ、お前さん。お前には慈悲ってもんがないのか。ミナちゃんと仲良くしたいのに今はそれが叶わない俺を見て可哀相だとは思わんのか。おー??このギャルゲ症候群」

「それが人にものを頼む態度か??あぁ、残念だ。今せっかく仕方がねぇと思って相談に乗ってやろうと思ったがそれももう叶わんのか。ホント残念だぜ」

「ごめんなさい、俺が悪かったでごぜーます。今すぐ態度を改めますので今一度、どうか…どうかもう一度私めにチャンスを!!春斗様ぁぁあああああッ!!」

俺の両足にぎゅっと抱きつく。

「ってプライド捨てんのはやッ!!それにマジ懇願してやがるぜ。この男」

「しょうがねぇな。…おい、かえで起きろお前の出番だ。今こそ、お前の真の目覚めるパワーを発揮するときが来た。この俺の代わりにその見えざるパワーをこいつに分け与えてやるんだ」

ゆさゆさと寝てるかえでの身体を揺さぶる。

「むにゅ…あぁ??んだ春斗…もうご飯の時間??」

眠気眼ですんごく眠たそうに半開きでだらしない顔で俺を見るかえで。

「いや、それはまだだ。でもな、今しか味わえない今日この時特別限定イベントがたった今発生したんだ。これを攻略できんのはかえで。お前しか考えられない。どんなシチュでもそつなくこなすのはお前にしか無理なんだ」

それを聞いた瞬間、眠たそうだった目がぱちんと開き、顔つきも変わる。

「特別…限定…イベント。それは本当なのかい??夢のまた夢とか弘法筆の誤りねこに小判な馬の耳に念仏な話ではないだろうネ??」

後半使いどころが違うような気がするがまぁこの際気にしない。

「あぁ、そうだ。嘘偽りない事実だ。まだ信じられないっていうなら俺の目を見ろ。これが嘘をついている目に見えるか??」

じっと俺の目を窺う。

「うん、信じた☆」

嘘偽りのない俺の心を感じ取ったかえでは、疑いもしないでキラキラと目を輝かせ、俺を見つめていた。

「…なんて、純真な心の持ち主なんだ。これだけで信じられるなんて…。あたしだったら絶対無理なのにかえではやり遂げやがった。っていうか信じんなよ。それだとあんた本当はもの凄い純粋な心を持ってるんじゃないかって考え改めなくてはならなくなるからな」

「よし。それで今回のミッションはここにいる暁が人見知りが激しいミナに近づくためにどんな会話で臨めばいいか??っていう超難関ヘビー級だ。…どうだ??いけそうか??」

「うん、余裕☆」

「なんて、自信たっぷりの笑顔なんだ。今のかえでを見ていたら不可能を可能にしそうな気さえ思えてきそうだぜ」

「よし、行ってこい。かえで」

「れっつらごー☆」

そして、自信も期待もその小さい身体に受け、かえでは戦場に向かっていく。

「よし、暁☆春斗の命を受けて参上した。このあたしが代わりにその相談とやらのアドバイスを教授してやろう。感謝するのだぞ☆」

「おぉおぉおお~ッ!!同志かえで!!かえでがアドバイスすれば百戦錬磨も夢じゃねぇぜ!!ひゃほーぅ!!」

「ふっふっふ☆このあたしに不可能という文字は存在ないネ。とっておきの会話ネタを伝授してやろう」

「おう、頼んだぜ」