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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 保健室の扉をノックして開ける。
 そしてとうとう恵さんとレンが正式に対面した。
 互いに目を合わせて数秒……、2人はまるで凍りついたかのように動かなくなった。
 やがて2人は互いの名前を呟いた。
「……恵」
「……レン」
 身を震わせるレンと涙を浮かべて口を押さえる塩田さん……、すると動けない塩田さんの代わりにレンが近づくと大きく手を広げて塩田さんを抱きしめた。
 そして耳元に口を近づけて言った。
「ただいま、恵」
「お帰りなさい、レン」
 すると塩田さんはレンの背中に手を回しながら言い返した。
 やっと再会できた。それを見ていた私は胸の中の支えが取れた。隣で兄貴は嫉妬しているんだろう、歯を軋ませて右手を握り締めていた。
 もてない男のひがみだ。そう思って溜息を零した時だった。
「よう、そっちも終ったみてぇだな」
 廊下から声が聞こえて振り向いた。
 首を伸ばして見てみると、そこには三葉さんと不和さんと大神さんが立っていた。
 この3人も余程の激戦を繰り広げてきたのが分かる、身なりもボロボロだし、彼方此方が傷だらけだった。
 そんな事を考えていた時だった。突然兄貴がその場に膝を着いて倒れた。
「えっ? 兄さん?」
 私は驚いた。
 だがそれは兄貴達だけじゃなかった。
 不破さん達も全身の力が抜けてその場にぐったりと膝を着き、レンも塩田さんの膝の上に倒れた。
「レ、レンっ、どうしたの?」
 塩田さんも慌てふためいた。
 再び会えたのにこのままお別れなんてゴメンだった。
 何しろ私は兄貴達に謝ってないからだ。私が兄貴の背中を揺すった時だった。
「くかぁぁ〜〜……」
「はああっ?」
 兄貴は……、いや、皆寝息を立てて眠っていた。
 塩田さんもレンの頭に手を乗せて安堵の息を吐くと私を見て苦笑した。
「やれやれ、疲れてるのは分かるけど……、運ぶのが大変ね、春休みの最中で良かったわ」
 里中先生は深く溜息を零した。
 今日は色々ありすぎた。
 ただ今回は異星人だけの責任じゃない、地球人にだって問題はあった。
 私は何も考えていなかったのかもしれない、地球人の欲望・絶望・悪意・憎悪……、それらをこの1日で嫌と言うほど知らされた。
 ただそれでも2つだけ大切な物を学んだ。どんな時でも『希望』を捨てない事、たとえどんな事があろうとも大事な人を『信じる事』をだった。
 私はもう迷わない……、少しでも強くなろう、そう思った1日だった。
 だけどとりあえず言おうと思っていた事を言った。意識は無いけど決めていた事は決めていた事だ。
「おかえり、兄さん」
 私は兄貴に言った。
 その兄貴の顔は人知れずに死闘を繰り広げたとは思えないくらい安らぎに満ちていた。