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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 それから3日後。
 富士山麓の地下に設けられた惑星密偵団体地球支部日本支部本部、現在ここでは日本中で活動しているセイヴァー・エージェント達が所属している各支部の支部長や班長が集まっていた。
 青い光沢を放つスペース・メタルで作られた国会議事堂の会議室の数倍はあるだろうフロアの真ん中に同じ金属で作られたドーナツ状のテーブルが設置され、テーブルに会議に出席している者達が座っていた。勿論その中にはミーゼルもいた。
 皆地球人の姿をしている者はいるが、それは仮の姿、ここにいる者達は全て地球を守る為にゼルベリオスからやって来た異星人だった。
 彼等はテーブルの中央に浮かび上がったワイヤー・フレーム状の球体の中に浮かび上がる様々な異星人の顔を見ていた。
 一通り見終えるとテーブルの中央に座る黒い軍服と燕尾服が合体したような様な服と白いズボン姿、髪型はオールバックで目付きが60代前半の男が説明をして来た。 
 彼は地球支部日本支部を取り仕切る支部長のホルド星人ハロス・ファールだった。
「今見て貰ったのが、一連の被害者達だ。彼等は何の罪も犯していない地球在中の異星人達だ」
 ハロスは続けた。
 今日本の各地で異星人が立て続けに襲われて殺害されると言う事件が起こった。
 最初は通り魔的犯行かと思われたが、被害者の数はこの1月の間にすでに200人を超えていた。 
 しかも現場に落ちていた物を調べた結果、犯人は意外な者達だった。
 その落ちていた物が球体型モニターに映し出された。
 それは一昔前のグレイ型の宇宙人が描かれたイラストが赤く大きな×印で塗り潰された紙切れだった。
 それを見た者達は一間置くと口を開いた。
「やはり、この事件は地球人と言う事で間違い無いのですね?」
「まさか、地球人に我々の存在が気付かれる等……」
「絶対に無いと言い切れるのか? 何らかの事情で異星人の情報が漏れていたとしたら……」
「何らかの事情とは?」
「異星人の情報は我々が管理してる、情報が漏れる等まずありえない」
「まさか、我々に裏切り者がいるとでも言うのか?」
「バカな! そんな事が!」
「静粛にっ!」
 ハロスは参加者達を宥める。
 刹那の間、会議室に沈黙が走った。
 ハロスは深く息を吐きながら言った。
「地球人が犯人と言う証拠はまだ無い、仮に地球人が犯人だとしても我々には地球人を裁く権利は無い…… 諜報部では何の報告も無いのか?」
 ハルスは1人の人物を見た。
 そこにいたのは白髪交じりの黒髪と色白で細い顎に丸い眼鏡をかけた小皺が目立ち始めた40代後半の中年の男だった。
 彼はカイト星人アブラム・カサウ、日本支部探索派の代表だった。
 アブラムは静かに口を開いた。
「はい、全探索派に命じていますが…… 未だに何とも」
「そんなの言い訳に過ぎないだろう、そうやってモタついているから被害者の数が出るのではないのか?」
 突然1人の男が口を開いた。
 右目に眼帯を着けた50代前半で隻眼の猛々しい顔つきで、左右の髪が逆立ち中央の髪だけが赤い男がテーブルに両手を叩きつけるように立ちあがった。
 彼はグラディス星人アレス・ベッカー、日本支部戦闘派の代表だった。
「大体宇宙平和条約自体が甘過ぎる、それでは異星人達が何かあった時に『黙って殺されろ』と言ってる様な物だ!」
 アレスは忌々しく言う。
 宇宙平和条約には『異星人は滞在する惑星の生態系や資源に一切危害を与えてはならない』と言う決まりがある。
 例え落ち葉1枚、石コロ1つ許可無く宇宙に持ち出そうものなら即座に逮捕検挙されてしまう、それは軽傷でも同じだった。
 多少の小競り合いや格闘技の練習や試合ならともかく、どのような理由があっても怪我をさせた時点で惑星外退去が命じられてしまうのだ。
「待ってくださいアレス部長、それは問題が違います…… 確かに宇宙平和条約だって絶対じゃないし不満はあるのは皆同じです、ですがそれと今回の件は別問題です!」
「その通りです、私達はあくまで宇宙平和条約未登録惑星に危害を及ぼす異星人犯罪者を検挙するのが使命です…… 第一下手をして地球が他の惑星と戦争を起こしたら誰が責任を取るんですか?」
 アレスに行ったのは2人の男女だった。
 その内男の方は20代後半の白い肌と金色で左目が隠れる位に前髪を伸ばした黒いスーツとネクタイの上から白衣を羽織った彼は医療派の代表、ハクチヨ星人キグナ・スワン。
 そして女の方は赤いウェーブのかかった髪に黒い上下黒いスーツと踵の高いヒールを履いた彼女は開発派の代表、ヒルア星人キャナル・ダクアだった。
「私とて地球人との戦争を望んでいる訳じゃない、だが我々は神では無いのだ。事件が起こったと同時に現場に駆け付けられる訳がない!」
「確かに、少しくらいなら抵抗した方が被害は少なくて済みます…… 地球人の方は記憶を消せば良いだけですし」
「怪我をさせる事自体が問題でしょう、異星人が付ける傷は僅かな擦り傷でも大事に至る場合があるのですよ!」
「なら大人しく殺されろとでも言うか? 貴様一体どっちの味方だ?」
「どっちとかこっちとかの問題では無いでしょう!」
 今まで黙っていた支部長や班長達も主張を繰り出し、会議はさらに白熱した。
 しかしこれと言った進展も案も無く、間もなくして会議は終了となった。
「では探索派には引き続き犯人の特定を急いで貰いたい、それと混乱を防ぐ為に地球在中の異星人達には事件の事は防いでおく事とする…… 以上」
 ハロスが席を立つと他の者達も疲れた感じでため息を吐くとその場を立ちあがった。