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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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マコトは消えてしまったのだ。

「地蔵さんに連れてかれた・・・?」

呆然と呟く朋尋の言葉を聞き、伊吹は弾かれたように階段に戻る。

「伊吹!」

朋尋が呼び止めるのも聞かずに、伊吹は階段を駆け上がる。二階の廊下を猛然とダッシュし、地蔵の前で止まる。

地蔵はそこにいた。想像していたよりも小さい。細い目で微笑んでいる。どこにでもある普通の地蔵だ。

「・・・マコトの、」

地蔵の足元には、懐中電灯が落ちていた。マコトが持っていたものに間違いない。
嫌な予感がざわざわと足元を駆け抜けていくのがわかる。真夏だというのに体中が冷たくなっていくのがわかった。ここは危険だ。いや、危険なのは始めからわかっていたのに。

「嘘だろ・・・」

追いついた朋尋が愕然とした声で呟くのを聞き、膝が折れそうになるのを必死にこらえる。

(どうしたら・・・どうしよう・・・)

そのとき再び。


ギシギシッ


すぐそばの教室から床を踏みしめる音が聞こえた。

「マコト!」
「朋尋だめだ!」

きびすを返した朋尋の腕をとろうとしたが、間に合わない。朋尋が教室に飛び込み、伊吹はすぐさま追う。しかし。

「・・・朋尋っ!」

教室に朋尋の姿はない。青白い月明かりに照らされた、物言わぬ机の列が、静かに佇んでいるだけだった。

「朋尋・・・」

二人が、消えてしまった。どうしよう。

(俺がなんとか、しなくちゃ・・・)

折れそうになる心を何とか奮い立たせ、伊吹は滲んだ涙をぬぐう。

「絶対二人を見つけて帰る」

声に出して己を奮い立たせる。

音もない旧校舎に残された伊吹は、一人地蔵と対峙する。