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ACT ARME9 ~人と夢と欲望と

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その違和感は、己の感情だったのか?この者たちと、願わくばともにいたいという欲だったのか?
だとすれば、それは殺人機である己にとっては即刻修復すべきイレギュラーだ。
だが、それはイレギュラーではなく、本来己の中にあるべきものなのだとすれば・・・。
殺人機であることのほうがイレギュラーであったのだとすれば・・・。
誰からの命でもなく、己の意思でこの先を決めろと言われたら・・・。
「ボクにはフォートの気持ちはわからない。だから一つだけ質問させて。
君は、この先No.1でありたいのかい?それとも、フォートでありたいのかい?」
「己は・・・」
これまでの己の中で流れた時間。その中からどの時間を選べと、否、選んでもいいと言われたのなら・・・。
己は
「後者だ。」
ここで素直にフォートだ、と言わなかったのは、フォートなりの照れ隠しだったのかもしれない。

いや、もしかすると単に自分の名前にまだ違和感を感じていただけかもしれないが。
なんにせよ。フォートは生まれて初めて自分の意思を今ここに示した。
となるとルインたちが次に移す行動は、フォートの意思を貫き通させることただ一つ。
「というわけで黒ボスさん。フォートは僕らが連れて行くよ。捕虜じゃなくて、仲間としてね。」
そう言うルインの顔は一切の混じり気なく嬉しそうだった。
「まさか、No.1がここを裏切るということになろうとはな。全く以て予想できないことだ。」
そういう割には、その声はあまり残念そうな雰囲気が混じっていない。
「それが人の面白みってやつじゃないの?んで、僕らは何もなければこれにてお暇したいんだけど・・・」
即座に仮面の奥の瞳がキラリと光る。
「それを許すと思うか?」
「デスヨネー。まあわかってはいたけどさ。そんなに危険かね?僕は。」
それを聞いて後ろから一斉にため息が。
「もう面倒なのでツッコミはしませんよ。少しは自己反省というものを覚えてください。」
今回のこの件も発端がルインである以上、これ以上言い逃れしようとするのは無理がありそうだ。
「へいへい。僕が悪ぅござんした。反省してマース。」
全く反省の意を込めない謝罪をする。
「じゃあ、お前はまだ僕を殺すつもりなわけね。それは、後ろの仲間も含めて?」
ルインの質問に、黒ずくめの男は頷く。
「この場を知られた以上、生きて返すわけには行かない。」
その言葉が終わると同時に、部屋の奥の影が一瞬キラリと光る。
その直後、何かがものすごい勢いで迫ってきた。
先頭にいたルインが咄嗟にかわす。そして真後ろにいたグロウに直撃、吹っ飛ばされた。
「あ、ヤッベ。まあグロウなら大丈夫か。耐久力ゴキブリ並だし。」
えらい言いようである。まあ実際すぐに自分を押しつぶしたものをどかし「てめぇあとで覚えてろよ!」と怒鳴り込んできたわけで、ある意味的を射ている発言だが。
と、グロウが押しのけていたそれが引っ込んでいった。どうやら今のは巨大なアームのようなもので、奥に操っているものがいるらしい。
「アハッ。すごいすごい。ペシャンコにならなかったぁ。」
両手をパチパチさせながら現れたのは、まだ歳いくらもなさそうな幼い女の子だった。その背にはリュックのようなものを背負っている。
「今までの人たちは今のでプチってペシャンコになるのに、あなた強いのね。」
あどけない顔で物騒なことを言っている。
さっきの一撃を受けて、グロウもその気になったようだ。眼の色が変わっている。
「面白ェ。他は手ぇだすなよ。あいつは俺がやる。」
「言われなくてもやらないさ。グロウ以外じゃプチってペシャンコにされてしまうからね。だからボクは・・・」
レックが皆まで言う前に、奥から弾丸が飛んできた。レックはそれをしっかり見きり、棍ではじき落とす。
「この人の相手をする。」
「あら、いい筋しているじゃない。今日はとても楽しい日が送れそうね。」
弾丸を放った女が極上ステーキを食べる前の時のように舌なめずりする。その姿は、まるで踊り子をやっているかのような華奢な体だった。その手の中には、ライフルのような銃身の長い銃が握られていた。顔も丁寧に化粧され、手にしている銃もまるでこれからのステージに用いる小道具であるかのように造形が美しい。
「さあ、始めましょう。」
その深紅の唇から楽しそうな微笑が漏れる。

次々と現れるデリーター達を前に後ずさる女性コンビと、そのさらに後ろにいるツェリライを庇うようにしてカウルが立つ。
「来る・・・!」
カウルが構えると同時に軽い砲撃音が鳴り、風を切る音とともに砲弾が飛んできた。
「ハァッ!」
カウルがそれを電当で破壊した。
「やはり暗殺第一の組織だな。揃いも揃って影から不意打ちをしてくるおかげで読みやすかったぞ。でてこい。」
カウルが暗がりに声をかけると、グロウに負けず劣らずの巨漢で武骨な男が姿を現した。
「生憎だが俺はどちらかといえば破壊工作任務を請け負っている。」
「そうだろうな。」
カウルが男の持っているものを見て同意する。全長が1.5mもありそうな巨大なランチャーカノン。並みの人では持つこともままならなそうだ。
「随分とごつい得物だな。ぎりぎり兵器の域に達しているんじゃないか?」
「兵器の域に達しているのではない。これは兵器だ。」
そう言い放ち、男は再びランチャーを構えた。
「No.4。目標を破壊する。」
その巨大な砲身から砲弾が放たれる。
「後ろは離れていろ!」
カウルは後ろ三人に指示を飛ばし、自らは突っ込んでいった。

「・・・どうしてこうなってしまうんでしょう?」
ハルカが悲しそうに呟く。
「あの黒い人は、この世界から争いをなくしたいと、そう言っていました。その願いはとても素晴らしいものなのに、こんなことをしてしまうなんて・・・。」
「マスターにはマスターの考えがある。ガヤがごちゃごちゃ言えることじゃねえんだよ。」 
ハルカの呟きを返す声が聞こえた。その先には片手剣を手にした男が立っていた。
「戦う気のない男女と、戦うことを嫌う女が相手か。予想より早く終るかもな。」
不敵に笑う男だったが、その顔が突如痛そうに歪んだ。
「何を勝手に三対一でやろうとしているのだ。」
見ると男の頬がつきたてのお餅の如く気持ちよく伸びている。だが、伸ばしているものは明らかに手ではない。それは、ツェリライのQBUと似ているが、形は球体で口が付いている。それはさながらパックマンのようだった。
その後ろにはジト目で立っている女がいる。どうやらこの人がこれを操っているようだ。随分と古めかしい話し方をしているが、見た目は普通の若い女性である。
「イデデデデ!そんなカッカすることじゃないだろう!」
ようやく浮遊物体から離れ、痛そうに頬を手で押さえる。
「人のことを無視するお前が悪い。そんなことより早く始めるぞ。お前はそちらの女子二人とやれ。我は・・・」
女はゆっくりとツェリライの方を向き、不敵な笑みを浮かべる。
「あの童の相手をしよう。」

方々で戦闘が今にも始まりそうな様子を、黒ずくめの男は静かに見下ろしていた。
「隙ありぃ!」
と、いつの間にかこっそり背後に回り込んでいたルインが奇襲を仕掛けた。
しかしその奇襲は届かず、目前で防がれた。