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___50000km 〜 奇麗な娘



 ある日曜日の朝、彼はワタシを洗車してくれたわ。

 頭のてっぺんから 足の裏までゴシゴシ洗って、最後にワックスクリームを塗って、いつもより入念に磨いていくれた。すっごくテカテカになったの。それからお腹いっぱいにガソリンを御馳走していただいて、ドライブに出発したのよ。

 でもね、ある場所まで来たらさ 奇麗な娘さんが乗ってきたのよ (フンッ)
 彼は助手席の奇麗な娘さんにワタシの事を自慢してくれた。そんな時は、嬉しくって少しだけエンジン音を高く響かせちゃった☆
 少しは嫉妬もしたけど、彼はとっても楽しそうに運転していたしね。浮気の一つくらいは大目に見てあげるくらいの器量はワタシにだってあるわ。それって愛される女の条件よね?

 だけども、ワタシはその奇麗な娘さんがあまり好きにはなれなかったわ。
 だって、ドアを閉めるとき バタン!って痛いんだもん。彼の好きな曲を流してあげれば途中で変えちゃうし、タバコの灰はハラハラ落とすし。いつかなんて彼は言いなりになってレッドゾーンまでスピードをあげたりもしたわよ (汗、汗、汗)
 ハッキリ言わせてもらえば、女の趣味は悪いわね。それでも彼は、そんな奇麗な娘さんのワガママだって楽しんでいた。
 なんだかワタシ、とっても悔しくって、故障のフリしてデートの途中で止まってやったのよ。すると奇麗な娘さんは機嫌が悪くなって帰っちゃった (エヘヘ)

 数日後の夜、彼がワタシを海に誘ってくれた。
 夜の波を眺めながら 落ち込んでいたわ。
 どうしたの?
 ステレオから優しい曲を静かに流してあげる事くらいしかできなかった…。
 なぜだろう、ワタシの心もふるえてた。
 しばらくして思えば、奇麗な娘さんはもうワタシに乗らなくなっていたわ。

 ……ごめんなさい

 でも、また彼と二人で過ごす日々が訪れたのよ。
 彼ったら ハンドルを指で弾きながら大きな声で歌ったりするの。その歌を聴くとワタシはもっと楽しませてあげたいって気持ちが湧いてくる。元気になってくれれば、それだけで嬉しかったし、ワタシたちはとてもいい関係だったの。

 あの娘さんが来るまではね。