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DESTINY BREAKER 一章 5

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桜花は聞き逃してないぞといった表情で夏樹をみた。
「えへへ・・・。」
桜花の顔をみて、イタズラっぽく夏樹は笑った。
「悪いことは悪いことなんだよ。夏樹。他の人に迷惑が掛かるかもしれないでしょ?」
「でも、私がやる分は終わったから・・・帰らしてくれない先生が悪いんだもん。」
「それなら他の人の仕事を手伝ってあげればよかったんじゃないの?そうすれば早く帰れるじゃない。」
「だって、桜花ちゃんと帰りたかったんだもん・・・。」
子供みたいな理由だなあと桜花は思ったが、恐らく最近の物騒な話題を耳にしたことでこの行動も私を思ってのことだろうと夏樹の優しさには素直に感謝した。でも悪いことは悪い。それが道徳というものだ。
「私も一緒に行ってあげるから明日顧問の先生に謝るんだよ。」
「桜花ちゃん・・・怒ってる?」
桜花の目を見ないように、俯き加減の夏樹が手をもじもじさせた。
フゥと桜花は小さく息を吐き
「呆れてはいるけど、怒ってないよナツ。それとまだ買い物してないんだけど一緒に来る?」
と言って優しく夏樹の頭に手を置いた。
「もちろん!おともするよ。」
そういうと夏樹は腕を組もうと桜花の腕を掴んで自分に引き寄せた。
「ちょっとナツ。危ないって。」
「えへへ、離さないよ。」
バランスを崩しそうになりながらも歩き出す。
まぁ寒いから丁度いいかなと桜花は微笑んだ。
雪が止んだあとのオレンジの空はどこまでもオレンジで隣にある温もりは際限なく優しい。

どうか、この安らぎが壊れませんように。

二つの影は夕焼けの下に並んでどこまでも長く伸びていた。


「やはり――。」
遅かったかと、影は悔しげに呟いた。
影は感じていた。感じたからこそ、そこに影はいた。
この地に流れる気の歪みを嘆く生命の残り香を
嗅覚が研ぎ澄まされているものならば感じることのできる地面にこびりついた人間という動物が放つ血と臓物の匂い。ほんの数刻前までヤツはここで食事をしていたのだろう。
「ヤロウ・・・二人も」
悔しさに歯と歯を強く噛み合せるとギシギシと軋んだ。
明確な怒りは握り締めた手のひらに己の爪をめり込ませ痛みとともに燃え上がる。
まだ体の感覚が完全に戻らない。もし戻っていたのならきっと―――。
「冷静になるんだ。」
怒りは一瞬の力を生むが、同時に勘を鈍らせる。この感情を今は抑えるしかない。
作品名:DESTINY BREAKER 一章 5 作家名:翡翠翠