小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アナザーワールドへようこそっ!  第一章  【006】

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 



  【006】



「……あなたたちは、どこから来たのですか?」


 俺とシーナは、『町の教会』で出会った『カールトン神父』から食事をいただき、その後 さっきの神父がやって来て、俺たちに「質問」を始めた。


 それにしても……うーん、何て言えばいいんだろう?


「『地球』という『異世界』から来ました、テヘペロッ!」

 なのか……、

「一時間前に、『あの世』みたいなところから、この『アナザーワールド』へ転生してきました、えっへんっ!」

 なのか……。

 いずれにしても、すごく怪しまれること間違いないだろう。

 そんな……俺が神父の質問へどう答えればいいか迷っていると、隣にいたシーナが、

「わたしたちは、ここから西へ行ったところにある草原から参りました。」
「西? ああ……『サルベージ平原』ですか?」
「はい」
「……」

 やるな、シーナ。

「そうでしたか~……でも、あの辺は特に何もないでしょう? どうして、また?」

 神父もまたワザとなのかわからないが、ちょっと「イジワルっぽい質問」をしてきた。

「あらっ? 知らないのですか、神父さん? あのサルベージ平原には『めずらしい薬草』が群生しているところがあるんですよ?」

 はっ? そうなの、シーナさん?

「おおっ! よくご存知でっ! そうなんです、あそこには『自然界』では珍しい『魔力を回復させる薬草』があるんです。でも、よく、そのことをご存知でしたね? その薬草がサルベージ平原で群生していることは、この町の者くらいしか知らないと思いますが……」

 さらに、神父のきわどい質問が続く。

「ふふ……そうですか? さっき食事中にみつけた『旅人の日記』に書いてありましたよ?」
「ああ……はっはっは。そうでしたか、『旅人の日記』ですか……なるほど」

 神父は「してやられた」という感じで大笑いをした。

「お、おい、シーナ……『旅人の日記』って何だ?」
「ほら、これよ」


『旅人の日記』……それは、この町に来て教会で泊まった旅人が、教会へのお礼や、この町の思い出を残していくために教会が用意してある『日記帳』のようなものである。主に、教会や神父への感謝の言葉が書いてあるのだが、その中に今、シーナが言った『薬草』の話もあったということだった。


 ひとしきり大笑いをした神父が口を開く。

「いやーすみません、いろいろ疑ったりして……あなたたちは大丈夫そうですね」

 そう言うと神父は少しホッとした表情を浮かべた。

「……どういうことですか?」

 シーナは神父に尋ねた。

「いえ……実は先日、ここに泊まった旅人が、夜中に教会の貴重品を盗もうとしたことがあったんです。でも、その盗みを働いている現場をわたしがたまたまみつけまして、それで、彼らを捕まえたのですが……」 
「つ、捕まえた? し、神父さん、すごいですね!」

 俺は、驚きのあまり、つい神父さんに声をかけていた……というのも、ちょっと失礼な話だが一見すると「強そう」に見えなかったからだ。

「そんな、すごくないですよ。たまたま、その二人組がたいしたことなかっただけですから……ハハハ」
「それでも、すごいですよ、神父様! 二人を相手にして捕まえるだなんて……」
「いやー……ハッハッハ」

 シーナも俺と同じように神父に感心していた。

 一段落して、神父が話を続ける。

「ただ、少し困ったことが起きまして……」
「困ったこと?」
「はい。二人組を捕まえた私は、教会(ここ)の地下にある『穀物用の保管庫』で二人を縄で縛って閉じ込めていたんです。そして、明日、『王立軍』へ引き渡す予定だったのですが……どうやら逃げ出したようでして」
「ええっ? 逃げた?」
「はい。まあ、そんな大悪党という感じでもなかったので問題ないかとは思いますが……ただ、その二人が仲間を連れて私に仕返しに教会へ来るんじゃないかと思ったら、ちょっと心配になりまして……それで……」
「なるほど……それで、わたしたちがその二人組の仲間と思ったんですね?」
「は、はい……疑ってすみません。なんせ、昨日の今日でしたし……それに、お二人の格好がこの辺ではあまり見ない服装でしたので……」

 ほんの一時間前……この世界に来たばかりのときは、そんな自分の格好に注意を向ける余裕が無かったので気づかなかったが、今、神父にそう言われて初めて、俺は自分の格好に気づいた。

 確かに、俺とシーナの格好は少し……というか、かなりこの町の人たちとは違っていた。

 町の人は、「皮の服」を身に纏っていたが、俺とシーナは「ロープのようなもの」を着ていた。

 イメージ的には、「古代ギリシャ人の服装」みたいな感じだ。

 さすがに頭に「月桂冠」みたいなものはないが、格好はあんな感じに近かった。

 ちなみに、そんな格好した奴は、この町にはいない。

……そりゃ、まあ、疑われて当然だわな。

「そんな気にしないでください。こんな紛らわしい格好したわたしたちが悪いんですから……すみませんでした」

 と、シーナは謙虚にそう言って神父に謝った。

 すごいな、こいつ……「おバカ」なのか「万能」なのか、ちょっとわからなくなってきたな。

「いえいえ、そんな……謝らないでください。私も変に疑ってイジワルな質問をしてすみませんでした」

 と、二人の「謝罪合戦」が一段落した頃……、


「し、神父さま~!! 神父さま~!!」


 と、教会の入口から誰かの大声が聞こえてきた。

 声を聞く限り、少し「穏やかじゃない様子」だったこともあり、神父と俺たちは一緒に、入口まで急いで駆けつけた。


「ど、どうしました?……そんなに慌てて」

 そこには、農作業の格好をした男が顔を青ざめながら、おろおろとしていた。

「は、はい! オラ、さっきまで町の裏にある『アポロニアの森』で『うさぎ狩り』さ、してたんだけど、そこで、神父さんの娘のアイリちゃんが、何か『ガラの悪そうな連中』に絡まれていたんだぁ。それで、オラ、こりゃ"てーへん(大変)"だ、と思って報告さ来たんだぁー」

 す、すごい訛りだな……。

 て言うか、この世界にも「うさぎ」っているんだ?

 いやいやいや……それよりも「娘」? 神父さんに子供がいたんだ。

「ア、アイリが……っ!! そ、そんな……。ま、まさか、あの『二人組』が?!」

 神父さんの顔から血の気が引いているのがわかった。

 すると、訛りの強いおっさんが続けて話す。

「ああ、間違いねぇ。オラ、顔を見たが、昨日、神父さんが捕まえた二人組だった。しかも、その二人組以外にもガラの悪そうな男が二人、いた~」

「ガラの悪そうな男が二人」……つまり、全員で「四人」てことか。

「……わ、わかりました。報告してくれてありがとうございます」
「し、神父さん、行くのけ?」
「は、はい。元はと言えば、私が『蒔いた種』ですから……それに、娘を……アイリを助けに行かないと」

 神父は、覚悟を決めたような「顔つき」になり、すぐにでも向かおうとしていた。

 すると、ここで……一人の「おバカ」が声を上げた。