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やきもち

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大好きなキミに偽りのない気持ちをメールをしよう。
そうだ、大切に持ち帰った かさかさな朱色のほおずきの実を携帯電話のカメラで写して添付しよう。キミは何て言うのかな。キミの返事を楽しみに待つボクが居る。

友人と飲んだお酒も 起きたてに感じていた頭痛に似た頭の重さも 思い立って出かけた散歩で消えていた。散歩の途中で 見かけた蝶にキミを重ねてしまったようだ。

キミからの返信メールは、昼を回った頃 ボクが昼食を作るの為にコンロの前に居たときだった。仕事用の机の上で携帯電話が騒いでいる。
でも、慌てないさ。メールだから……。なんて思いながらボクは、机にすっとんでいった。
「きたきた」
急いで文字を読む。スクロールも不要な短文。いつものことだ。もう慣れた。
それにしても見てすぐ分かる内容。まばたきすらも要らない。これは、読むではない、見るというべきか……。
『にゃん』

こんな文が届き始めた頃は ボクも解読するのにしばらく掛かった。でもその状況、タイミングを何度か経験するうち ほぼ完全な確立で分かるようになった。
これは凄いぞと思うのだが 誰にも自慢できないのが残念だ。

「どうするか?」
ボクはキッチンに戻り、コンロの火を消した。鍋に煮立っていた水 いやもう湯になっていた液体の気泡が静かに消え、もわぁんと湯気が立ち上がった。
「少し待つか。『来る』っていってるし」
ボクのおなかの中で(残念)と腹の虫が泣いた。食べる気満々でいたボクのおなかは 途端によく騒ぐようになった。ぐるぐぅぅ… 仕方ない、少しだけ何かツマミ食いして待とう。
結局、コンビニの抽選くじで貰ったカップそばを啜ってしまった。旨かったな。
残り汁を片付けているとキミがドアを開けて 入って来た。

「いらっしゃい」
いつものキミの笑顔にボクは、腕を広げ飛び込んで来てくれるのを期待したが、あれ?少し様子が違うぞ。キミは机の上にあったほおずきの実を掌の上にのせるとひと息吹いた。
「これだにゃん」
「あ、そう。ほおずきの画像のね」
それから、ボクは友人のことや小料理店のおかみさんの話をした。
ボクは、キミのことを思い出していたよ、なんてことも加えて言ってみた。
「綺麗な人?」
「ああ、品のいい綺麗な人だったよ。ボクたちよりひと回りほど年上の女性なんだけどね。可愛いっていうか…」
おかみさんの顔を思い出し浮べるように天井を見上げて、はっとキミを見返した。
「くにゃっ!」
キミは、立ち上がると、荷物を持ってキッチンへと入り込んだ。
作品名:やきもち 作家名:甜茶