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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 7

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 眠そうな目をグシグシとパジャマの袖でぬぐいながらリュリュが不満げに口を尖らせた。
「別にリュリュは兄様とエドの結婚には何一つ文句はないのじゃぞ。」
「リュリュの部屋が一番広いからね。さすがにソフィアの部屋じゃ5人で話をするのは無理だし。私の部屋もソフィアの部屋ほどじゃないけど若干手狭だしね。」
「うー・・・ねーさまはおうぼうですのじゃー。リュリュはもう寝ますので勝手にしてくだされ・・・。」
 リュリュはそう言ってベッドに倒れこむと、すぐにスヤスヤと寝息を立て始めた。
「あの・・・私リュリュ以上に全然関係ないんですけど、なんで呼ばれているんでしょう。」
 若干緊張感を持って話し合いに臨もうとしているエドやクロエ、それに話をする気まんまんのソフィアや、野次馬根性丸出しのジゼルとは違い、自分がなぜここにいるのかわからないといった感じでキャシーがおずおずと手を挙げる。
「じゃあ、逆に聞くわキャシー。この面子で第三者の立場で司会進行が出来そうな人間がいる?」
「そんな堂々と胸を張って言われましても。」
「いる?」
「ジゼル様がその気になればできるんじゃないですか?」
 キャシーは眠いらしく、あくび混じりになりながら、投げやりな様子でそう言った。
「それが、どうやらソフィアが里帰りした時に余計なおみやげを持ってきたみたいだから、残念ながら私も当事者になる場面があるのよ。」
「おみやげ?」
「ええ、おみやげ。ねえ、ソフィア?」
「ああ・・・じゃあジゼルちゃんは聞いてたんだ。」
「もちろん。お父様のところに来る前にリィナさんが話をしてくれたわ。」
「意外だなあ、それなら自分がって名乗り出そうなものなのに。」
「もちろんそのつもりだったわよ。でもお父様に止められたの。『世界とお前の自己満足を天秤にかけろ』ってね。それで私はリュリュではなく世界を選んだ。冷たい人間だと思うならそれでもいいわ。」
 自嘲気味にそう言って笑うジゼルを見てソフィアは首を横に降った。
「別にそうは思わないかな。わたしだってジゼルちゃんの立場だったら同じことをすると思うしね。」
 二人の会話を聞いていたエドが二人の間に割って入るように口を開く。
「ジゼルがリュリュより世界を選んだって、どういうこと?ジゼルはリュリュの事、すごく大事にしているじゃない。」
「大事にするにはわけがあるのよ、エド。」
「それだけが理由じゃないんだから、そんな言い方しなくてもいいのに。」
「それが理由に入っているなら、それだけで私は最低の人間よ。お父様もね。」
「ねえ、二人は一体何の話をしているの?今日はアレクの話をするんじゃないの?」
「アレクとエドとクロエの話よ。だからこの話も関係ないってことはないからね。これはアレクも知らないことだけど、アレクとこの先結婚するあなた達には正しくグランボルカのことを知っておいてほしいの。」
 そう言ってエドとクロエに向けられたジゼルの視線と瞳は、今まで見たことがないくらい深く澄んでいて、それでいてどこか暗く濁っているようにも見えた。
「ですが、アレクシス様はきっとエドを・・・」
「選ぶかもしれないわね。でも、最初にお父さまが言い出した時点で即決出来なかったということは、クロエの可能性もあるの。それに例え選ばれなかったとしても、あなたはアレクの側を離れないでしょう?それとも側近をやめて在野に下る?」
「・・・いいえ。」
「だったら、どちらにしても聞いてもらわなきゃいけない話よ。このことにアリスは気づいていた。アレクも到達出来なかった真実を彼女がどうやって知ったかはわからないけれど、アリスがいなくなった今、一番近くにいるあなたは知らなきゃいけないことだから。」
 そう言って立ち上がると、ジゼルはリュリュのベッドの横に立った。
「ごめんね、リュリュ。もしかしたらワクワクするような恋の話が聞けると思っていたのかもしれないけど、真面目な話なの。だから狸寝入りはやめて、一緒に聞いてくれるかしら。」
「・・・バレておりましたか。」
「バレバレよ。人は寝る時、そんなに規則正しい寝息は立てないの。」
「うぬぅ・・・姉様はよく見ていらっしゃるのですじゃ。」
「そりゃあ、ね。実の妹のことはちゃんと見ているわよ。」
「・・・え?姉様、今なんと?」
「だから、リュリュとあたしは姉妹だって言ったのよ。細かい話はこれからするけど、結論から言っちゃうとそういう事。」
 ジゼルの発言の後、一瞬の間を置いて4人の驚嘆の叫び声が城内にこだました。



 結局明け方まで話し込んでしまい、みんなといっしょにリュリュの部屋で寝たソフィアが昼過ぎに部屋に戻ると、不機嫌そうな表情でレオが窓の縁に腰掛けて外を眺めていた。
「あれ?どうしたのレオ君。」
「別に。」
 そう短く答えただけで、レオはソフィアの方を向かない。
「ねえ、どうしたの?何怒ってるの?・・・って、レオ君もしかして徹夜したの?」
 レオの顔を覗きこんだソフィアはレオの目の下に隈ができているのを見つけた。
「昨日の夜、ユリウスとアレクが来てな。それで、まあ色々・・・ジゼルのこととかも話をして。それから寝たら多分約束の時間に間に合わないからそのまま起きていた訳だけど。」
「あ・・・ごめん。多分レオ君のところにはアレクシス君とユリウス君が行っていると思ったから、今日は中止かなって思ってリュリュちゃんの部屋でぐっすり寝ちゃった。」
「ま、いいけどな。中止なら俺は部屋に帰って寝るわ。」
「あ、ちょっと待って。だったらここで寝ていったらいいじゃない。」
「いや。俺って枕が変わると眠れない質だし。」
「アストゥラビでもぐっすりだったじゃない。」
「ごめん。ソフィアアレルギーだから、お前がそばにいるとクシャミがでて眠れないんだ。」
「全然普通に話してるよね。」
「すまん、ずっと黙っていたけど、他に好きな女ができたんだ。」
「・・・怒るよ。」
「嘘ですごめんなさい。・・・っていうか、お前が側にいると落ち着いて寝られないってのは事実なんだよ。お前やたらと頭なでたりしてくるだろ。」
「そうは言うけど、レオ君って、寝ている時に頭をなでてあげると気持ちよさそうにしてるよ。もうねえ、それが可愛くて、可愛くて・・・痛っ」
「可愛いとかいうな!」
 レオはそう言ってソフィアの頭にチョップを落とすと部屋を出ていこうとする。
「逃さないよー。」
 ソフィアはニコニコと笑いながら立ち去ろうとするレオの腕を取ると、ベッドに向かって投げた。
「・・・お前はもう少し夫に対しての思いやりとかそういうものを持ったほうがいいと思う。」
 マットレスの上に仰向けに着地したレオが半ば諦めたかのように天井を見ながらそうつぶやく。
「皆とそういう話をしていたらなんだか久しぶりにレオ君と一緒に寝たくなっちゃって。レオ君ったら恥ずかしがって実家でも別の部屋だったし、アストゥラビではクロエちゃんと私が相部屋だったしでもう1月くらい一緒に寝てないもんね。」
「それだと、先月まで俺とお前が一緒に寝ていたみたいな感じになっちゃうだろ。グランボルカに入ってからお前と一緒に寝た記憶なんてねえぞ。」
「でも実際一緒に寝てたしね。」
「いや、寝てねえよ。捏造するなよ。」