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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 7

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エピローグ



 婚礼の式典から一夜明けた翌日。ジゼルは重大なミスに気がついた。
「・・・アリスの指名手配の取り消し、誰もしてないじゃない。」
 とは言え、関係各所への連役や賓客の招待の業務に追われていた彼女を誰が責められるだろうか。
 責めることができる人間が居るとすれば、ひっそりと息を潜めて隠れていたアリス本人くらいのものだが、その彼女はその日の朝にアミサガンの街を離れた後だ。
「そりゃあ、婚礼になんて来られるわけないわよね。ああ・・・申し訳ないことしたなあ。」
 ジゼルはひとしきり後悔とも愚痴とも付かない言葉を口にしたあとで、すぐに事務方の人間を呼んで、アレクシスの名でアリスの指名手配の取り消しを指示した。
「姉様、あまりご機嫌がよろしくないようですが。」
 出て行く兵士と入れ替わりに部屋に入ってきたリュリュがジゼルの苦虫を噛み潰したような表情を見てそう言った。
「・・・別にイライラしているわけではないのよ。アレクの姉代わりだったアリスをのけものにするような形で式典を行っちゃったからね。ちょっと焦っているだけ。」
「まあ、アリスのことですから、そのことに本気で目くじらを立てるようなことはしますまいが・・・拗ねて何処かへ旅立ってしまっている位の事はしていそうですな。」
 リュリュの言葉を聞いて、ジゼルは「そうよね・・・」と短く呟く。
「まあ、そんなことを言ってても仕方ないし、ご機嫌取りを兼ねて、何人かアリスを探しに出すか・・・。リュリュ、オリガとキャシー。それとあのアレクシスのところの怪しいやつ。なんだっけ・・・ああ、そうだ。ルーファス。アイツを呼んで頂戴。」
「承知しました。」
 ジゼルに言われ、城内を駆けまわったリュリュは30分ほどで指定された3人を集めてジゼルの元へ戻ってきた。
 リュリュからこれからどういった事を命じられるのかをなんとなく聞いていた3人はジゼルからの命令を受けると、すぐに準備をして街を出た。
「あとは・・・ああ、そうだ。セロトニアに注文した武具を取りに行かせないと。」
 結局この街にある資材では全員分の武具を作れないということになったのと、途中から加わったマタイサ軍の分の追加での武具発注を行った結果、当初ルチアがアレクシスに行った見積よりも時間も金額も大分膨れ上がってしまってはいたが、もうじき完成する運びとなっており、それを受け取り、この街まで守りながら帰ってくる人間が必要になってくる。
万が一この船を沈められてしまっては大量の武具は海の藻屑となってしまうので、こちらにも人を割かなければいけない。
「船は・・・まあ、お父様を行かせるか。ルチアさんにも会いたいだろうし。」
 本来騎馬の指揮を得意とするアンドラーシュを船で送るなどというのは宝の持ち腐れもいいところなのだが、長年父娘として暮らしてきたジゼルとしては本格的な開戦の前に少しでもアンドラーシュをルチアに会わせてやりたいと考えていた。ジゼルは父の心がわからない娘ではないのだ。
 そうして、アンドラーシュを送り出し、アリスの捜索隊を送り出した一週間後、事態は一気に動き出す。
 ただ、ジゼルの判断を誰が責められるだろうか。
 彼女は、父に喜んで欲しかっただけだ。
 友を迎えに行きたかっただけだ。

 人としては当たり前の心情、判断だ。
普通ならそんな時にそんなことが起こるはずがない。そう思ってしまう。
しかし、そんな時だからこそ、そんなことが起こってしまう。

敵大軍ジュロメ要塞とアミサガンを分断する形で出現。

アレクシス軍は、窮地に立たされることになった。