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ひづきまよ
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サキコとおっさんの話13

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■本日雨。鬱蒼とした曇り空。

 いつものようにコンビニのタバコ自販機前喫煙所。最近ではやれ禁煙やら健康を害するやらで肩身が狭い喫煙者のおっさんは、それでもいつものようにタバコをひたすら嗜む。
「三者面談やったろ、おっさんの時も」
 ベンチで腰をかける派手な女子高生、サキコはおもむろに問いかけた。
「はぁん?」
「さんしゃめんだん」
 ああ、懐かしいな・・・とおっさんは過去の学生の頃を思い出す。親と同伴で教師と面接するのが嫌で堪らなかったが、今となってはどうして嫌だったんだろうか。
「何だ、面談したのか?」
「したよー。進路相談とかいろいろあるじゃん。学校での態度とかさぁ」
「お前の事だから変な事暴露されたんだろ?」
 横に置いているコーヒーの缶を手に取り、一口飲むと再びまた置く。
「落ち着きがないと言われまして・・・」
「はは、やっぱりかよ」
 思いの通りの結果だなとおっさんは笑った。
「したらさぁ、うちの母さんもさ、『本当にこの子は家に居ても落ち着きが無くて~!一旦家に帰ったと思ったらばたばたとどこかへほっつき歩いて行ってしまって、勉強するにも音楽かけなきゃ集中できないとかで大音響で変な音楽ずっとかけっぱなしなんですよぉおお、うちのね、父親もそんなタイプでしてぇ、一か所で大人しくするっていう行動が全然できない性格なんですよぉおお。どうやったら落ち着いてくれるのかこの所ずっと悩んでおりましてぇ、進路にしても大学や就職先であっちこっちにふらふらしてどこかに行っちゃうんじゃないかとぉ、それが心配なんですよねぇえええ、他の生徒さんにご迷惑おかけしてないかと不安でしょうがないんですよぉおおお。あ、それとねぇ、この通りの外見でしょう?ご近所とかにもねぇ、どこかの仮装パーティにでも行くのかって噂されちゃったりねぇ。今は自分なりにいろいろ考えて髪の色を戻しているんですけど、当時はもう恥ずかしくてねえ、子供たちとかにもアホのサキコとか女仙人とか色んなあだ名を付けられてたんですよぉ』とか言いやがってさぁ」
 延々とよくそこまで記憶しているなと感心する。
 この親にしてこの子ありなんじゃないかと思ったが、言ったらやかましくなりそうでやめておこうと煙を吐き出した。
 あーあ、と彼女は溜息をつく。
「心配してんだろ」と無難な言葉を返した。
「貶められてるんじゃねえかって思ったんだよ」
「そこまで気にかけてくれるんならいいだろ?俺なんかな」
 おっさんの体験談に興味を持ったサキコは、不意に顔を上げる。おっさんはふぅう、と白い煙を吐き出しながら一言呟くように言った。

「生きていればそれでいいって言われたんだぞ」

 一瞬、二人は無言になる。それはそれで一番重要なんだけれど・・・。
 サキコはまたコーヒーを飲むと、「今までどんな危険な事をしてきたんだよ・・・」と感想だけ述べるに留まった。
「小さい頃とか屋根の雪に埋もれそうになったりな・・・近所の犬の鎖に首絞められたり・・・胃が弱かったからすぐ食い物に当たったり、凍った沼地でスケートの真似事してたら俺の所だけ割れて消防車呼ばれたりな・・・まぁ、いろいろあったんだよ・・・」
「呪われてんじゃねえのそれ」

 時刻は午後二十時前になっていた。