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ORIGIN180E ハルカイリ島 中央刑務所編 11

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老「馬鹿はお前だ。ほら、抜かれたじゃないか。私が抱いてやった時みたいに、もっと必死になって叫んでみろよ。アモー、そこで突っついてやれ。勝ちたかったら、なりふり構わずやる事だ」
ユ「ハイッハイッハイヤッ、ハ───ッ。残念だったな、レイク。僕の勝ちだ。馬に車体倒しは無理だよ、モーターバイクじゃないんだから」

 そんな所へ、ちょうどチョースがいじっていたネット上の壁の穴が開いて、レイクの作った防護壁が突破されてしまった。チョースは少し舌を出すとキーで何か操作して、知らん顔を決め込んだように頭の後ろに手を回した。
レ「‥っア──────ッ!!」
 突然叫んだレイクに、コンピューター室も本部室も驚いて一瞬言葉を失った。
 アモーが見ると、レイクは再び発作に襲われたように身を震わせていた。しかしその口をついて出た叫びがマイクを通して馬にも伝わった。
 彼の馬は突然、猛ダッシュをかけ始め、見ている者達がどよめいた。
レ「ハ───ッ、ア───ッ‥うわ────ッ」
ユ「反則だッ。誰だ?」
チ「俺。いいじゃないか、いい勝負になった。どう見てもお前、手ェ抜きっぱなしてたし」
老「何だ、アモーが襲ってるんじゃないのか」
ア「やめてくれ!死んでしまう。レイクは弱ってるんだ、チョース!!」
チ「じゃあ何故戦いなんか仕掛けた。ユースに勝利するなんて、どれだけ逆立ちしてみたって無理だぜ。それにお前ら二人は相思相愛で、もう完全にデキてるじゃないか、レイク。それを今更、何が不服で争ってみようとするんだ」
レ「ウ───ッ。やめ‥イヤ───ッ、ア───ッ」
老「いいな、馬もいい子に走ってる。もっとよがってみせろ」
助「まさに女のよがり声作戦だ」
助「向こうは普通に戦ってるんだがな」
 アモーはレイクを押さえ込んで、ミットンにどうすればいいのかという視線を投げた。だがミットンは別室にいて、生命維持装置の指示を忙しくしていた。それでアモーは仕方なくレイクの体を引き寄せると、少年の腰に手を伸ばした。

 一方ゲームの方はユースとレイクの馬が鼻をそろえて走っている所で、あと二馬身ほどでゴールだった。今では本部室の助手もコンピューター室の所員も、皆がヤアヤアと声援をたて始めていた。それはまるで競馬の実況中継を見て騒ぐ客のようだった。
ユ「ハ───ッ、ハイヤ──ッ、ハア───ッ。いいぞッ」
 ユースもこの時には接戦を楽しんでいるようだった。
 コンピューター室の隣の小部屋では、審判のイ技師が複雑な表情で画面を眺めていた。あまりにもひどい騒ぎに、彼は耳のヘッドホンを少し離して聞くはめに陥っていた。

 本部室では皆が興奮しきった面持ちで、手を振り体を動かしゲームの成り行きを眺めていた。その中で、アモーとミットンと技師だけがまだ真剣に仕事をしていた。
 叫びのた打ち回るレイクを、アモーはこれ以上見ていることができなかった。彼は肛門から再び器具を差し込むつもりで、内視鏡のスコープの先を消毒しながらレイクに声をかけた。
ア「いいか、取るぞ。うなずいてくれ、レイク」
 医者はそれでも事前に了解を得ておこうと、少年の顔を覗き込んだ。レイクはアモーに上半身を拘束用ベルトで押さえられ、ズボンを下ろされてから下半身にもベルトをかけられた。
 そうこうしている内に、馬はゴールに到達していた。
レ「ア────ッ、‥ヤ゛─────ッ!!」
助「やった!!鼻先の差だ。坊主の勝利だ、やったやった!」
 助手達がレイクのベッドの周りを、手を繋いで取り囲んで子供の遊びのようにピョンピョンと飛んで回った。アモーはそれに怒り心頭して怒鳴った。
ア「ちょっとは手伝え!押さえてろ!!」
チ「アモー先生、何してる?無理にチップを引くなよ。レイクの脳内の“恐怖の扉”が開く仕掛けになってる。そんな事したら、すぐに精神崩壊につながるぞ」
ア「何だと…?」
チ「今、刺激を抑えてやる。勝負はついた。ゲームを面白くしようと思ってね。終わればこんなに叫ばせとく必要はない」
レ「───ッ、アアッ、アアアッ」
ミ「一体、何を与えてるんだ?」
チ「かつての同僚、Aとの記憶さ。一番最悪なやつ。…よく鳴いただろ、俺に感謝しろよ」
 レイクはショックの余韻でまだガタガタ震えていた。アモーは舌をかまないようにと口に布を挟んで、鼻には呼吸器をつけさせた。彼はもどかしい気分で少年の腰を眺めやり、仕方なくそのズボンを元通りに上げてため息をついた。
ア「こんな状態で次のゲームは出来ない。何を考えてるんだ、君らは」
ユ「さっきのは反則だったが、レイクの脳にそれを命令したのはチョースだった。これをどう判定しますか、イさん?」
イ「待ってくれ…耳が痛い。私が決めなきゃならんのか」
老「全部終わってからでいいじゃないか。おい、さっさと次のを始めよう。どうせそちらはレイクが機械をいじらないんだろ、誰に操作をやらせてるんだ?」
助「バレてるよ‥」
 小声で助手がそう言い、ベンは困ったように仲間を見た。助手らはベンを励ますように取り囲むと、新たなるゲームの開始をコンピューターに告げるよう言った。